ロッキードとパーティー券 なぜ日本の政治家はこんなに小さくなったのか?
自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件は、安倍、岸田、二階の3派閥が解散を決めるなど、党を揺るがす事態に発展しました。自民党の支持率も激しく落ち込んでいるようです。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、今回の事件に「日本の政治家が小さくなった」と改めて感じたようです。若山氏が独自の視点で語ります。
特捜のモチベーション
逮捕者も出たが、パーティー券問題による政治家の追及も一段落だろうか。注目された安倍派の幹部たちは立件を免れたようだ。そして自民党に派閥の解散風が吹いている。 パーティー券売り上げの個人還流分の「不記載」という政治資金規正法違反がどの程度の罪なのか、また会計責任者と政治家本人の関係の真実はどうなのか、僕ら素人にはよく分からない。しかもこの「不記載」はかなり前からのことであるという。地検特捜部はなぜこのタイミングで動いたのだろうか。 安倍派に照準が絞られていたように見えるのは、もちろん不記載が圧倒的に多かったからだろう。しかし特捜部の捜査に国民感情の後押しがあったとすれば、「一強」と呼ばれた安倍政権の強引な政治手法と、森友学園問題とそれに絡む赤木さんの自殺、さらに加計学園、桜を見る会、検事の定年延長などの問題に対する、国民の反感が吹き出したということだろうか。特に、旧統一教会との関係が大きな要素であったのではないか。 僕ら高齢の人間の頭に浮かぶのは、1976年に起きたロッキード事件以来の「政治と金」の問題の変遷である。この事件以後、政治家への献金に対する摘発が相次いで、また1994年には政党交付金制度も導入され、政治はかなりクリーンになったといわれる。 しかしここでは、あのロッキード事件と今回のパーティー券事件を少し違う視点で論じてみたい。 友人たちの意見を聞いてみると、田中角栄はいまだに不思議な人気がある。一方で、安倍晋三本人は別にして、安倍派幹部の面々はどうも人気がない。法律的には、田中が問われた「受託収賄罪」の方が罪が重いと思うのだが、政治家としての人気となると、雲泥の差があるのだ。これはどういうことだろうか。その理由を考えることが、安倍派幹部に対する国民の怒りと、現代日本政治の本質的な問題を浮かび上がらせるのではないかという気がするのだ。