昇給のタイミングはいつ?制度の種類・平均昇給額・昇給率を解説
企業で働き続けていくうえで気になるのが「昇給」です。この先、収入をどれくらい上げていけるかは、現職にとどまるか転職するかの決断を左右する要素の一つとなるでしょう。昇給の時期、昇給率、昇給の種類、定期昇給がある企業で働くメリット・デメリットについて、社会保険労務士・岡佳伸さん監修のもと解説します。
昇給の時期は「4月」が多数
昇給の時期は企業によって異なりますが、年1回の実施であれば「4月」に設定している企業が大多数を占めています。年2回昇給がある企業では「4月」と「10月」が一般的です。ほか、「1月」に昇給する企業もあります。 なお、能力主義・成果主義のベンチャー企業などでは、四半期に1回、つまり3カ月ごとに昇給・降給が実施されているケースも見られます。
昇給率は、昇給前・後の給与額で計算する
昇給率とは、昇給前と比較し、昇給後の給与が何%上がったのかを示すものです。企業から発表される昇給率は、以下の計算方法で出された数値です。 昇給率(%)=昇給後の給与÷昇給前の給与-1(100%) 仮に月給30万円から31万円に上がった場合、昇給率は3.3%となります。企業の昇給率をもとに、将来、どのくらいの昇給が見込めるかを予測できるでしょう。 厚生労働省では、民間主要企業の春季賃上げ要求・妥結状況を毎年、集計しています。令和5年の集計結果によると、賃上げの平均妥結額は1万1245 円。賃上げ率は3.60%で、前年の賃上げ率2.20%を大きく上回りました。 出典:厚生労働省「令和5年春季賃上げ集計」
昇給の7パターンを紹介
昇給にはさまざまな種類があり、企業によって有無が異なります。7つのパターンをご紹介します。 ◇定期昇給 一般的に「昇給」というと、ほとんどの場合は定期昇給を指します。定期昇給とは、年齢や勤続年数に応じて、毎年定められた時期に行われる昇給です。 定期昇給の基本的な仕組みについては、国家公務員の給与制度を参考にすると理解しやすいでしょう。 公務員の基本給は、職務の「級」と「号俸」で設定されています。「級」とは、職務の内容や責任のレベル(係員・主任・係長など)に応じて決定されます。人事評価に応じて上位の級に変更されるのが「昇格」です。 一方、「号俸」とは、勤続年数・年齢などに応じて序列化されたもので、号俸が上がることで自動的に昇給します。民間企業でも、呼称は異なるものの、この仕組みをベースとした給与テーブルが設定されていることが多いのです。 ◇ベースアップ ベースアップとは、全ての従業員を対象に、基本給の水準を一律で上げることを指します。会社の業績アップ、あるいは社会情勢の変化(経済成長やインフレなど)に応じ、不定期で実施されます。 ◇自動昇給 従業員の年齢や勤続年数に基づき、自動的に昇給します。個人の能力・実績を問わず、全従業員が対象となります。 ◇考課昇給 業績や勤務態度など、人事考課に基づいて昇給します。企業が期待する目標を達成しているか、企業が求める行動に沿っているかどうかが評価されます。査定の結果によっては昇給しない場合もあります。 ◇臨時昇給 時期を定めず、企業の業績が好調なときなどに臨時で行われます。基本給が上がるわけではなく、社員の働きに対する報酬としての昇給です。 ◇普通昇給 従業員の職務遂行能力や技術力などが高まったことなどを理由として行われる昇給です。時期や対象者は限定されません。 ◇特別昇給 会社に対し、大きく貢献した従業員を対象に実施される昇給です。昇進・昇格も伴います。時期は限定されません。