Appleのオーディオ機器はなぜ評価されるようになったのか? AirPods Pro 2の「聴覚補助機能」からヒントを探る
今回はまず、少しだけ“与太話”をさせてほしい。 最近でこそ、Appleのオーディオ機器もある程度は評価されるようになっている……という表現も失礼か(何しろ、ワイヤレスイヤフォン市場ではトップメーカーなのだから)。しかし。以前は「Appleのオーディオ機器は音質が良くない」という評判が定着していた。 【画像】iOS 18.1とAirPods Pro 2でヒアリングチェックを行ったところ 写真で例えるなら、「被写体の質感描写はなく、ただなめらかできれいに見える」ことを「高画質」と評価するようなものだ。耳触りは良くても、情報量が乏しく、演奏が本来持っているニュアンスや情熱、質感が伝わってこない。そして何より、空気感が希薄で、音場の雰囲気を感じ取ることができない。 空虚で実体感に乏しく、不快な音は出さないものの、魂が抜けたかのような音楽になる――筆者も、Appleファンが読んだら怒り出すような評を書いたこともある。 そんな「マニアの話」はどうでもでもいいだって? 実はこの話、今回のコラムに大きな関係がある。 Appleはオーディオにまつわるさまざまな問題解決を、従来のオーディオメーカーとは異なるアプローチで進めている。現状では、その戦略を完全にやり切っているわけではないが、音質面に限らない取り組みを着実に進めている。 このコラムの最後には音質の話もするが、まずは話題の「AirPods Pro 2」における聴覚(ヒアリング)補助機能について話をしよう。
「iOS 18.1」で実装されるAirPodsの聴覚補助機能
Appleは10月28日にリリースした「iOS 18.1」「iPadOS 18.1」において、AirPods Pro 2向けに以下の聴覚補助機能を新たに搭載した。 ・ヒアリングチェック:ユーザーの聴覚の衰えなどをテスト可能 ・ヒアリング補助:聴覚の衰えに応じて、出力される音を補正 ・アクティブ聴覚保護機能(機能拡充):モードを問わず、大きすぎる音を抑制 ヒアリングチェックとヒアリング補助は、セットで用いることで聴覚の衰えを医療グレードの検査プログラムを通してテストした上で、その結果を踏まえて聴覚を補正してくれる。 AirPods Pro 2では、「外部音取り込みモード」が有効な場合、急に大きな音が入ってくると自動的に音量を抑える「ハイダイナミックレンジマルチバンドコンプレッサ」を既に実装しているが、アクティブ聴覚保護機能はそれを拡充し、外部音取り込みモード以外でもあらゆる“大音量”から聴覚を保護できるようになる。 上記の機能はハードウェア側の対応も必要となるため、現状ではAirPods Pro 2以外のAirPodsシリーズでは利用できない。また、アクティブ聴覚保護機能については「macOS Sequoia 15.1」を搭載するMacでも利用可能だが、現時点では米国とカナダでのみ有効となる。AirPods Pro 2自身のファームウェア更新も必要だ。