Appleのオーディオ機器はなぜ評価されるようになったのか? AirPods Pro 2の「聴覚補助機能」からヒントを探る
聴覚補助機能は「耳の健康」を守る上で大切
筆者が実際にヒアリングチェックを行ったところ、左右の耳の聞こえ具合は共に「4dBHL」という結果となった。そのため、新たに追加された聴覚補助機能による補正がどのようなものか、自分で体感することはできなかった。 AirPods Pro 2のバッテリー駆動時間は、公称で最大6時間とされている。そのこともあり、聴覚補助機能が発表されてから「こんなに駆動時間が短くては補聴器の代替にはならない」という辛辣(しんらつ)な声もあった。 しかし、AppleはAirPods Pro 2で「補聴器の代替」を狙っているわけではない。「耳の健康」を守ることに意識を置いている。 ご存じの通り、Appleは以前から、AirPods Pro 2においてハイダイナミックレンジマルチバンドコンプレッサという機能を搭載している。これはアクティブノイズキャンセリング(ANC)技術を応用して、難聴のリスクがある大きな周辺音を、違和感を最小限に抑えつつ、適切なレベルまで引き下げるという聴覚保護機能だ。 今回追加されたヒアリング補助機能では、「聴覚が健康なら問題なし」と済ませるのではなく、ユーザーに聴覚を健全に保つための情報を与えている。米国とカナダ限定とはなるが、アクティブ聴覚保護機能も、音楽を楽しむ課程で起こりうる難聴を防ぐ文脈で搭載されている。 若年層における後天性難聴の原因として、「ヘッドフォンなどで大音量を聴き続けてしまった」「スピーカーや爆発物の近くで突然大きな音にさらされた」といった事象が挙げられる。後者については、いわゆる「爆音コンサート」においてありがちだったりもする。 難聴は身体的/認知的なパフォーマンスの低下をもたらすという研究もある。認知症の発症リスクを高める可能性も否定できないため、厚生労働省でも難聴対策の取り組みを継続的に行っている。 iOS/iPadOS 18.1を搭載するiPhone/iPadとAirPods Pro 2を組み合わせると、ヒアリングチェックによって難聴の早期発見が行える上、ヒアリング補正によって本来の聴覚との違いを認識できる。そうすれば、難聴が進行する前に適切な医療機関で受診するきっかけにもなりうる。社会全体では、難聴の先にある認知症のリスクを抑えられるかもしれない。 難聴を初期段階で把握することで、その後に続く症状の悪化や疾病の予防にもなる。