“建築界のノーベル賞”を知っている?世界に誇る建築家・山本理顕の代表作5選|プリツカー賞 9人目の日本人受賞者が手掛ける建築をご紹介
2. エコムスハウス(2004)/佐賀県
コミュニティや交流といったキーワードで語られることの多い山本さんの建築ですが、工業製品のような精度でシステマチックに構築されたデザインも見どころの1つです。 アルミメーカーSUSのアルミニウム造のモデルハウスであるエコムスハウスは、そうしたデザインがわかりやすく現れた代表例。工場で製作した1,200㎜角のパネルを、ボルト締めのみで現場で組み立てるシステムを考案して設計されています。 アルミ独特の切断面の美しさに着目し新たな構造表現を追求したこと、施工の短縮化や容易性などから、2004年にグッドデザイン賞を受賞しました。 所在地:佐賀県鳥栖市弥生が丘7-36
3. 天津図書館(2012)/中国・天津市
山本さんは、海外でも多くのプロジェクトを手掛けています。その1つが中国 天津市の図書館です。 延べ床面積は55,000㎡と、埼玉県立大学とほぼ同規模の巨大な建物で、その収蔵冊数はなんと600万冊にものぼるそう。 5層の建物ですが、メザニン階(中二階)を至るところに設けているため、複雑な構成の10層の建物にも見えるつくりです。 1階中央の南北に抜ける開放的なエントランスホールが印象的ですが、その一方で分節された小さな空間を散りばめて、画一的な空間となることを避け、多様な環境で利用者が読書を楽しめるように設計しています。 所在地:15 Fukang Rd, Nankai District, 中国
4. 熊本県営保田窪第一団(1991)/熊本県
建築や都市計画を通じて文化向上を図る「くまもとアートポリス」という熊本県の事業の一環で建設された団地。 集合住宅という形式で見知らぬ人たちが隣り合って一緒に住むことが、供給側の都合ではなく住まい手側にとってどのような意味をもつかを問い直したプロジェクトで、前述した「地域社会圏」を山本さんが提唱するきっかけになりました。 この団地の特徴は、ここで暮らす110世帯が共有して使える中庭(コモンスペース)にあります。革新的だったのは、この中庭には外からは入れず各住戸を通らないと立ち入れない造りであること。 住民たちだけの共同の空間である中庭を介してコミュニティを育むことを意図して、すべての住戸のリビングはガラス張りでこの中庭に面したプランニングになっているのです。 寝室側のプライバシーを守ることや熊本の気候を考慮して、間取りはリビングと寝室とが2棟にわかれ半屋外の渡り廊下で繋がれるという斬新なもので、当時は世間を賑わせたそう。 所在地:熊本市中央区帯山1-28