今年のセントライト記念は波乱の予感...ひと夏越して成長した素質馬2頭の一発に期待
「昨年の勝ち馬レーベンスティールにあやかって、ラジオNIKKEI賞(6月30日)3着馬を推すわけではないのですが、同馬のことは妙味あふれる"上り馬"として狙いたい1頭です。ここまでキャリア5戦で一度も馬券圏内(3着以内)を外したことがなく、相手なりに走れる能力の高さはもちろん、持ち前の体力を生かしたタフな走りが目を引きます。 前走のラジオNIKKEI賞では、メイショウヨゾラが前半1000mを58秒4というハイペースで飛ばすなかにあって、道中行きたがる面をのぞかせるなど、折り合いに苦労していました。その分、ロスが多いように感じましたが、直線では内から脚を伸ばして、勝ち馬からコンマ2秒差の3着を確保。地力の高さを示したと思います。 管理する辻哲英調教師も、『(前走では)力のあるところを見せてくれたと思います』と評価していました。 この中間は、調教から折り合いを意識して取り組んできたそうで、『角馬場から坂路やウッドチップコースに向かう間もしっかり歩けるようになって、成長を感じます』と辻調教師。精神面での成長を遂げているのは頼もしい限りです。 2走前の1勝クラス・山藤賞(4月13日/中山・芝2000m)は、確勝を期して逃げる作戦を選択したそうですが、今回は好位から中団に構えて、早めに持久力勝負に出ていく形で上位争いに加わっていく可能性は十分にあります。 1週前追い切りに騎乗した主戦の津村明秀騎手の感触も上々だったのこと。ひと夏越して一段とパワーアップしたとなれば、波乱の使者となってもおかしくないでしょう」 坂本記者が推奨するもう1頭は、ルカランフィースト(牡3歳)だ。
「セントライト記念の過去の勝ち馬で印象に残っているのは、2017年の覇者ミッキースワロー。菊沢隆徳調教師がデビュー前から、その素質を高く評価していた1頭です。ダービー切符を狙ったGII京都新聞杯は5着、その後の1000万下(現2勝クラス)・いわき特別も3着に終わりましたが、セントライト記念ではテン乗りでベテラン横山典弘騎手が騎乗。鮮やかな手綱さばきによって勝利し、同馬の実力を出しきっての結果だったと言えます。 このミッキースワローのように、秘める能力は高くても春先にはその能力をうまく出しきれず出世できなかった馬が、セントライト記念で存在感を示すことが多いです。2年前の勝ち馬ガイアフォースも初勝利が3月で、春のクラシック路線には間に合いませんでしたが、セントライト記念では秘めた能力を存分に発揮して快勝しました。 ルカランフィーストも、早くから素質の高さを評価されていた1頭。春は、GIIスプリングS(3月17日/中山・芝1800m)3着と優先出走権をつかんで皐月賞まで駒を進めましたが、同レースでは後方からの追い上げが及ばず、8着に終わりました。 それでも、勝ったジャスティンミラノが中山・芝2000mのコースレコード(当時)となる、1分57秒1をマークした超高速決着を経験しているのは強み。昨年10月、新馬戦(東京・芝1800m)を勝った際も、メンバー最速の上がり33秒6をマークするなど、時計の速い決着には対応可能とみます。 先週の秋華賞トライアル、GII紫苑S(9月7日/中山・芝2000m)では、皐月賞を上回るレコードタイムが飛び出し、開幕したばかりの中山は高速決着が顕著です。そうした馬場にも対応可能な素質馬が、夏の休養期間にじっくりと成長を促されて一変していれば......一発のチャンスは大いにあると思います」 セントライト記念は春の実績馬が強いレースとはいえ、もともと期待されていた馬がその才能を開花する一戦でもある。今年は、ここに名前の挙がった2頭が真価を発揮するのか、注目である。
土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu