ダマされたら、誰も助けてくれない…老後資金を作るには「投資しかない」という大ウソ
4つの根拠
以下でその根拠を詳しく説明していきましょう。 「老後4000万円不足する」という計算の根拠は、現在の状況で「2000万円不足する」ので、物価が毎年3.5%ずつ上がっていくと、10年後には老後資金の目標(収入から支出を引いた不足額)は2821万円となり、さらに10年後には4000万円になるというものです。 そして、これがどれだけ無茶苦茶な試算であり、金融機関のご都合主義で成り立っているのかを、次の4つの根拠から見てみましょう。 根拠1:すでに「2000万円不足する問題」が過去のもので、現在は存在しないのに、これを土台に計算するのはおかしな話です。 根拠2:消費支出は、年をとるごとに減っていきます。一方、年金額は多少なりとも増える傾向にあるので、20年後に5万5000円の不足ということは考えにくい。 根拠3:データの根拠となっているのは、「家計調査の夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯」ですが、現在65~69歳の就労人口は395万人、70歳以上は532万人で、男性は65歳以上でも半数が働いています。70歳から74歳で見ると、男性の約42%、女性の約26%は働いていて、その収入で完全に家計は黒字になっているケースが多い。今後は、その比率はもっと上がっていくでしょう。だとすれば、家計の不足額は更に減っていきます。 根拠4:インフレ3.5%上昇が続く可能性は低い。これが最大の問題です。
物価は本当に上がり続けるのか
IMFが予想している日本の今後のインフレ率は2%前後。2022年は2.5%、23年は3.27%と高いものの、24年からはこの物価高も一段落して2%台で推移するという予想です。 人口の減少や働く人の減少で経済力が停滞していて、GDPもドイツに抜かれて世界4位になっている。22年、23年はコストプッシュ型(輸入品の上昇)のインフレに見舞われて高インフレでしたが、長期的には購買力が伸びなければどんどんモノの価格を上げるわけにはいかないので、こうした見方が妥当でしょう。 ちなみに、日本はバブルでインフレ率が最大になった1991年でも、3.27%で、3.5%には届いていません。 なのに、なぜこの先20年間も、物価が毎年3.5%で上がり続けると言えるのか「老後4000万円」の試算では、示されていません。