海の最前列を独占する贅沢オーベルジュ「UMITO 鎌倉 腰越」
海最前列にステイするという極上の非日常
さて、訪れてまず驚いたのはそのロケーション。“海最前列”とは聞いていたものの、ここまで海が近いとは。“エボシライン”とも呼ばれる国道134号線沿い、腰越海岸に向けて開口部を広くとった建物は3階建て。1階がレストラン、2階と3階がそれぞれ1室のみの客室で計2室。つまり1日2組しかステイできない贅沢なつくりだ。 客室に足を踏み入れてみると、まず天井から床まで大きく開かれた窓の、全面に海が広がる様が圧巻。右は駿河湾と江の島、正面に初島、左に相模湾を擁する腰越の海を両腕で抱きしめるように感じることができる。ちなみに腰越海岸は1189年に義経の首実検が行われたことでも知られているが、今はサーファーやSUPなどマリンスポーツを楽しむ人や、砂浜を犬と散歩する人などが行き交う、穏やかなビーチ。ゴミひとつ落ちていない様を見ても、地元の人々がこの海岸をどれほど大切にしているか、その愛情を推しはかることができる。 室内に目を移してみれば、120平方メートル余の広々としたスペースに、リビングダイニングとベッドルームがふたつ。それぞれパーテーションで仕切れるのでプライバシーは保てるが、どの部屋にいても海が視野に飛び込んでくる。これはまごうかたなきオーシャンフロントだ。天然の木材を基調としたインテリアは心地よく、大きめな家具がリゾートにいるという解放感を与えてくれる。 また特筆すべきはバスルームだ。石壁が印象的なバスルームにはバスタブ、サウナ、水風呂、露天風呂が海へ向かって一直線に並んでおり、そのどれからも海を眺めることができる。サウナから水風呂、そしてテラスでの外気浴……と、常に海を眺めながら“ととのう”ひとときは極上の非日常を演出してくれることだろう。服を脱ぎ捨てたくなる衝動を抑えながら、階下へ。今日ここへやってきたのは、レストランでのディナーがお目当てだったことを忘れそうになっていた。
刻々と表情を変える夜空を味わうサンセット・ディナー
1階は20席のダイニングと、海をより間近に感じることができるテラス。「レストランひらまつ 広尾」で8年にわたり料理長を務めた小川大樹シェフによるフランス料理が楽しめる「Le RESTAURANT」だ。シェフ自身がディレクションしたというブルーをアクセントカラーにしたインテリア、吟味したカトラリーやテーブルウェアの数々など、細部にまでこだわった空間づくりに、「いつかは海辺に店をもちたいと思っていた」という小川シェフの深い想いを感じることができる。 楽しみにしていたディナーは鎌倉の山海の恵を活かした、ここでしか味わえない料理の数々。もともと腰越海岸は駿河湾と相模湾の間に位置していることから魚種も豊富で、小川シェフは日々近郊の魚市場に足を運び、その日のベストを仕入れているのだとか。ほかにも、地元の無農薬栽培や国内最高峰といわれる倉薗牛(宮崎)など、吟味された食材が洗練されたフレンチに昇華されているのが印象的であった。なかでもスペシャリテの「ラングスティーヌのエチュヴェ」には地魚のコンソメブイヤベースがたっぷり添えられ、滋味豊かな味わい。「ボーペイサージュ」など人気で入手困難なワインとのペアリングも楽しく、つい杯を重ねてしまった。 気づけば、先ほどまであざやかな夕焼けを見せてくれていた空もすっかり暮れなずみ、漆黒の星空へ。江の島には夜景がきらめき、展望灯台のイルミネーションが美しくまたたいていた。この空の変化を眺めながら美食に酔うのは何にも代えられない贅沢。このまま泊りたい、東京の自宅へ帰りたくないと考えながら、「あ、そのために『UMITO』があるのか」と腑に落ちた。月に数日でも、この極上の非日常を味わえるなら決して高くはないのでは、と自分の貯金残高をそっと確認したりして(笑)。 いつかは海を眺めながら暮らしたいとは誰もが夢みることだが、実際に別荘を所有するのはメンテナンスが大変だし、諸手続きも面倒くさい。 2024年11月から、西洋占星術的には本格的に“風の時代”がスタートし、時代は所有から共有へ、モノやお金より経験や時間へと価値基準が変化していくと言われているが、そんな観点からも「UMITO」は時代を先読みしているサービスだと言えるだろう。 UMITO 鎌倉 腰越 神奈川県鎌倉市腰越3-12-6 TEL0120-511-098(宿泊専用フリーダイヤル) TEL0467-55-8084(ホテル代表・レストラン) レストランの営業18:00~22:00(LO19:30)、不定休
Forbes JAPAN 編集部