「2021名古屋市長選・河村市政12年の検証」第1回 「河村流ポピュリズム」の是非
今年2月24日。愛知県警の捜査員が県内の複数の自治体の選挙管理委員会に強制捜査に入り、段ボール箱で署名簿を次々と運び出した。全国を騒がせた大村秀章知事に対する解職請求(リコール)運動をめぐる署名をめぐる問題は、ついに署名偽造「事件」となった。偽造を指示したのは誰かなど、数々の謎については警察が捜査している段階だ。 しかし、運動団体代表の高須克弥・高須クリニック院長は昨年6月の運動立ち上げ時、「河村市長から『こんなこと(トリエンナーレをめぐる愛知県の対応)を許してええんか』と電話があった」と説明。その後も「代表は河村市長が務めるものと思っていた」などと弁明していたことからわかるように、運動そのものを呼び掛けたのが名古屋市の河村たかし市長であることは明らかだ。 リコールを「武器」にするのは河村市長の十八番(おはこ)と言えるだろう。「国会議員時代から、減税政策を地方議会で通すには『リコールしかない』と考えていた」と2011年の著書で述べている。実際にその年は名古屋市議会に対するリコールを仕掛け、約37万人分の有効署名を集めて住民投票、議会解散を成立させた。 「10年前は確かに盛り上がっていた」と振り返るのは市内の80代男性だ。河村市長の熱烈な支持者で、10年前の市議会リコールも、今回の知事リコールも賛同した。ただ、最近は足腰が悪くなり、今回は署名集めのため街頭に立つことはせず、近所に署名用紙を配り歩く程度にとどめた。10年前のノウハウを運動団体側に伝えるようなこともしていない。 「コロナや暑さもあり、今回はそんなに署名は集まらんだろうと思っていた。そうしたら偽造なんて話が出た。何とバカなことをしたのか。そんな運動を河村市長が応援したのは事実だ」と男性は批判的に見ているが、それでも「市長を支持する気持ちはまったく変わらない」という。 「やっぱり給料800万円。自分の身を切る政治家は他におらん。河村さんには庶民を助ける政治をこれからもしてほしい」