選手のためにも、誹謗中傷と闘う準備をしていかなきゃいけない――田嶋幸三・JFA前会長の8年、そしてこれから #ニュースその後
「それでも座して死を待つなんていうことはできないし、代表が負けたら日本のサッカーが低迷するんだってことは、私の世代だったら、みんな知っているわけですよ。もう閑古鳥が鳴く中で代表戦もやっていましたし、Jリーグ以前の冬の時代も経験しています。そこには二度と戻りたくないから、やっぱりここでひと踏ん張りするしかないと思って、西野さんにお願いしたわけです」 あとは結果を信じるのみという状況で、日本代表はグループステージを突破。決勝トーナメントのベルギー戦では一時2点リードするなど初のベスト8があと一歩のところまで見えた。 「もちろん、ハリルさんが続投していたらどうなったか、という比較はできませんよ。でも、この選択が日本サッカーのためにベストだという自信を持って決断しました。現在の森保監督にしても、2022年カタールW杯の最終予選でオマーン、サウジに負けて、『森保解任論』が叫ばれたとき、『日本のサッカーで森保よりいい成績を残せることに100%自信の持てる人がいるなら、すぐにでも代わってもらう。でも、森保が今、最も日本代表を率いるのにふさわしいし、森保でなきゃ駄目なんだ』と本人にも言い続けました。良い成果を出せる監督は誰だというときに、ロシアのときは西野さん、その次は森保だと。彼らを何としても支えていくことが、日本のサッカーの発展につながると思っていたので、ある意味、苦しくなかったですね」
森保監督の続投に迷いはなかった
実際、森保監督はその信頼に応え、カタールW杯でも一定の成果をあげた。しかし、大会終了をもって退任することなく、次のW杯まで日本代表監督が続投するのは初めてだ。
「続投に迷いはなかったですね。ドイツとスペインに勝つという、世界を驚かせるようなことをしてくれたわけです。そして、クロアチア戦もPK戦までいったことを思うと、ここで代える必要性を感じなかった。森保、頑張ったじゃないかっていうところもありましたし。もちろん、何十億も出せば実績のある監督はいるでしょうけど、そういう人が日本代表に合うかはちょっと分からない。 今の監督サイドの世界の潮流を見ていると、やっぱりクラブチームに行きたいんですよね。クラブなら毎日指導ができて、自分の色を出せるから。代表だと大抵は2日くらいですよ。下手すると前日に来て、すぐ試合ってこともある。そういうところで指揮官としての実力を発揮するのは、結構難しいことだと思いますね。だから(監督の交代は)すごくリスクがあると思っています」