選手のためにも、誹謗中傷と闘う準備をしていかなきゃいけない――田嶋幸三・JFA前会長の8年、そしてこれから #ニュースその後
代表を強化していかなければ競技自体がもたなくなる
「実際にJFAのさまざまな委員会に関わり始めたのは、1986年から。もう38年くらい関わってきたので、ある意味、それらも全て含めた退任だと思っています。ありがたいことに、名誉会長という肩書をいただいていますが、JFAの意思決定などに関わることはなくなりました」 FWとして筑波大学や古河電気工業サッカー部(ジェフユナイテッド千葉の前身)で活躍し、日本代表としても国際Aマッチ7試合出場の経験を持つ田嶋。現役時代に痛めたというひざをさすりながら柔和な表情で話す姿には、どこか解放感のようなものが見えた。
「ただ、最後の8年間の会長職が、いかに責任があって重かったか。会長の責任としては、やはり代表を強くするっていうことが一番大事だと思っていますから。どんなに素晴らしいマーケティングや人事をしようとも、代表が負けたら日本サッカーそのものが総崩れになりかねないので。 もちろん負けるときもあるでしょう。でも、スポーツ業界自体がそうだと思いますけど、たゆまず強化していかなければ競技自体がもたなくなる。だから自分は、会長になってからは特に、強い代表チームをつくる、魅力ある代表チームをつくるっていうことをずっと考えてやってきました。 もっともイタリアのように、代表が勝てなくてもクラブの試合が満員という状況が理想です。でも、その文化を作っていくためには、やっぱり50年、100年かかるでしょう。だから、その意味でも、代表は常に強くあり続けなきゃいけないと思っています」
W杯2カ月前の、代表監督解任という衝撃
そのために田嶋が下した大きな決断の一つが、2018年ロシアW杯開幕の2カ月前の、代表監督「電撃解任」だ。代表監督の人事は、会長の専権事項だった。
「(当時代表監督だった)ハリルホジッチさんではもう立ち行かなくなると思ったんですね。解任の1年くらい前から、選手や技術委員長から『厳しい』という話は聞いていました。メディアに対して放言をするだけでなく、選手との溝ができていましたのでW杯での勝利は難しいと思いましたし、日本のサッカーを守ることを考えたら彼の継続は無いなと。本当にチームがどうなっているのか、監督は今どういう状況なのか、選手との関係はどうなのか、といったところまで分かってないと、やっぱり監督人事はできないなと思っています」 とはいえ本番2カ月前の監督解任は、周囲にはギャンブルにも映った。このタイミングでは、実績のある監督が見つかるはずもない。JFAの技術委員長だった西野朗氏を後任監督にスライドさせる「奇策」も批判の的になった。ハリルホジッチ氏からは訴訟も起こされた。