より安全性の高い新しい睡眠薬が次々登場 睡眠薬嫌いの日本、嫌われ者の汚名返上なるか?
副作用との闘いの歴史を振り返る、芥川龍之介や太宰治が使った薬はどの睡眠薬だった?
Q:不眠症にかかったら医師に相談すると回答した国民の割合は? A:スペイン、ドイツ、ブラジル、ベルギーは40%以上、中国は20%以上、日本は10%以下 【動画】本当に眠りながら食べまくる女性たち、謎の病 Q:不眠症にかかったら睡眠薬を服用すると回答した国民の割合は? A:スペイン、ベルギーは40%以上、中国、ブラジルは30%以上、ドイツは20%以上、日本は20%以下 このデータは「寝酒がダメな理由」で紹介した図にもあるように、世界10カ国、 計3万5327人を対象に2002年に実施されたSLE-EP (SLEep EPidemiological) Surveyで得られた結果の一部である。他の不眠対処法についても、自宅でも簡単にできる「カフェインを控える」も最下位、一方で睡眠の質を低下させるため勧められない「寝酒」を選択する人の割合はダントツであった。教育レベルが高い日本人だが、眠ることに関しては落第点のつく残念な結果であった。 さて、この調査でも明らかなように、日本人は睡眠薬が嫌いな国民であると言われる。睡眠薬は自殺や、時に犯罪に用いられるなど危険なイメージがつきまといがちだ。最近でも歌舞伎役者が睡眠薬を用いた事件を起こしたことも記憶に新しい。1960年前後に市販の睡眠薬として流通したサリドマイドが多くの胎児奇形や死産を引き起こした薬禍事件も高齢者の世代ではよく知られており、いまだに睡眠薬のイメージに暗い影を落としている。 私が厚生労働省の委託で一般成人を対象に行った意識調査でも、睡眠薬に対する懸念として「依存して止められなくなる」「量が増えてしまう」「認知症になる」「胎児への影響」など80%を超える人がさまざまな不安を感じていた。 これら心配事の中には誤った情報や過度に心配する必要の無いもの、果ては都市伝説のようなものも含まれるのだが、いずれにせよ何かと副作用が気になる人が多いようだ。そのため、睡眠薬を処方された場合も「服用は1回でも不安」「1週間以内なら」と短期間しか服用したくない人が半数を超え、不眠治療に一般的に要する数カ月もしくはそれ以上服用しても良いと回答した人は10%程度に過ぎなかった。 確かに睡眠薬の開発の歴史は副作用との闘いであったが、現在では安全性の高い治療薬も登場している。前回は認知行動療法について次回に紹介したいと書いたが、新しい睡眠薬が登場することもあり、睡眠薬の歴史を紐解いてみよう。