リザルトとは、時に“残酷な現実”を突きつけるもの~スーパーフォーミュラ第5戦~
「ごめんなさい。今日は格之進のレースだったけど……アイツには申し訳ない」 「アイツには本当に申し訳ない。今日はアイツが勝っていた。俺はあの1周で捉えられなかった時点で終わっていた」
2024年のスーパーフォーミュラ第5戦もてぎ。このレースで優勝を飾った牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は、トップチェッカー後にチームラジオでそう語った。
自身にとっては今季2勝目、そしてランキング首位の野尻智紀(TEAM MUGEN)に対して5ポイント差に迫った1戦だったにも関わらず、レース後に彼から聞こえてきたのは「今日は負け」という言葉だった。
ポールポジションから好スタートを決めた山下健太(KONDO RACING)がリードしていくなか、それを追いかけていったのはDOCOMO TEAM DNDELION RACINGの2台だった。このうち太田はタイヤ交換義務が有効となる10周目にピットイン。相手がピットに入るまでの間にタイムを稼いでいき最終的に逆転を狙う“アンダーカット”の作戦を採る。
これに対して牧野は、逆に後半まで引っ張る作戦を進めていく。22周目にピットストップを済ませ、翌周にタイヤ交換した山下を逆転。さらに新しいタイヤの利点を活かして追い上げていき、25周目には大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)をオーバーテイク。残る目標は10秒先を走る太田だった。
牧野は「やることは分かっているから大丈夫!」とチームに無線し、1周あたり1秒前後のペースで太田との差を詰めていく。両者の距離が縮まるとチームから太田・牧野に対して「クリーンファイトでお願いします!」と指示が飛ぶ。
チェッカーまで残り3周、いよいよチームメイトバトルが始まる。先に仕掛けたのは牧野で、96秒残っていたオーバーテイクシステム(OTS)を作動させて太田に近づいていく。これに対して太田も2コーナーを立ち上がったところでOTSのスイッチをオン。後半にタイヤ交換した牧野に分があり、コース後半になるにつれて距離を縮めていく。