リザルトとは、時に“残酷な現実”を突きつけるもの~スーパーフォーミュラ第5戦~
本来は優勝したドライバーの喜びの声が届けられる瞬間だったにも関わらず、牧野から返ってきたコメントは以上の通り。その後の記者会見でも「今日は勝負に負けた」と一切と言っても良いほど笑顔をみせない。
一方の太田は、決勝後のメディアミックスゾーンに真っ先に登場。レースでの出来事やトラブル時の状況、早めに動いた戦略などを淡々と話してくれたが、どこか精魂尽き果てた様子だった。
メディアミックスゾーンや記者会見が終わり、撤収作業が進むパドックに行って関係者らの取材をしていた時、偶然にも太田とバッタリ出会した。
普通なら、こういう結末で終わった時はいち早くサーキットを離れたいところだろうが、どうやら今回は牧野の車で2人一緒に移動していた模様。つまり記者会見が終わって、帰りの身支度が整うチームメイトを待っているという状態だった。
それでも、トランスポーターの中に閉じこもって外部との関わりを遮断することが多いが、太田は外に出てチームやHRC関係者らと話していた。
すでに彼の取材はメディアミックスゾーンで終えていたため、特に追加取材をする予定はなかったのだが「いやぁ、あそこ(スピンを喫した90度コーナー)を抑えられれば、勝ったなと思いました」と話し始めた太田。追加で色々と話を聞いているうちに、彼は言葉を詰まらせて涙を流し始め「一番悪いのは、運を持っていなかった自分」と自らを責め出した。
思い返せば、彼が初めてスーパーフォーミュラで優勝したのは2023年の最終戦。ルーキーイヤーのラストに掴み取れた勝利というところもあってか、今季序盤は少し肩の荷が下りて昨年以上に落ち着いた印象があった。
第2戦オートポリスで牧野が初優勝を飾った時も、自ら彼に対して祝福のコメントをしていた太田。おそらく、この時は「次は自分の番」と心の中で誓っていたと思うが、そこから歯車がズレ始めていく。
第3戦SUGOでは土曜日のフリープラクティス中にスロットルトラブルでクラッシュ。マシンの修復が間に合い予選に出走できたものの7番手に終わり、雨模様の決勝レースではコースオフを喫して順位を落とし、ノーポイントに終わった。