注目のミュージシャン、クレア・ラウジーが奏でる「エモ・アンビエント」 ジャンルに縛られない音楽づくり
クレア:自分にとって音楽は、何かを具体的に表現したいという気持ちから始まったものでした。最初はドラムの即興演奏から入って、もっと直接的でリアルな音を出したいと思ってフィールド・レコーディングに切り替えた。でも、まだ何かが足りない気がして、ドローンやアンビエント・ミュージックを使ってストーリーを語るような音楽をつくってみた。ただ、それでもまだ十分ではなかった。それは、ある種の“弱さ”や“脆(もろ)さ”がそこに欠けていたんです。だから次に、フィールドレ・コーディングの上に歌を重ねてみて、さらにその上でギターを弾いて歌うことにした。それでようやく、自分が本当に表現したいものが形になったと手応えを感じることができました。
さっきも話した通り、自分の関心はすでに次に向かっています。ただ、「sentiment」においては、当時の私が、自分の感情や創造的な意図を可能な限り具体的に表現したいという強い願望を抱いていたからこそ、あのようなアプローチを取ったと考えています。
――その新たな音楽スタイルを模索する中で、自分の歌声をつくり上げていく過程というのは、クレアさんにとってどんな時間だったのでしょうか。自分の内面と向き合う作業だったのか、それとも、オートチューンの使用に見られるようにテクニカルな側面が大きかったのか。
クレア:どちらかというと後者でした。そこはやはり、オートチューンとの出会いが大きかったと思います。 フィールド・レコーディングで多くの音楽をつくっていた頃は、生の音をそのまま使いたくて加工にはあまり手を出していなかったのですが、ただ、オーディオ・プロセッシングにはとても興味があって。自分の感性に合った音の加工方法を探求したいと思ったんです。フィールド・レコーディングを加工するのも面白いですが、自分としては、人間の音声を操作して、人間離れしたサウンドをつくることに魅力を感じていました。それで、オートチューンを使った声とギターの音をどう組み合わせたら面白いハーモニーになるか、みたいなことに興味を持ち、いろいろな実験を始めるようになりました。自分は元々、リスナーとして“歌”のある音楽が好きだったので、そういった音楽をつくるためのオーディオ・エンジニアリングは自分への一つの挑戦でもありました。でもそのおかげで、歌と激しいプロセシングを組み合わせた、自分だけの音楽をつくれるようになったと思います。