注目のミュージシャン、クレア・ラウジーが奏でる「エモ・アンビエント」 ジャンルに縛られない音楽づくり
新作「sentiment」での変化
――そこから、今回の「sentiment」のような自身のボーカルを使った音楽制作を始めるようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか。
クレア:そこもまたマリのおかげで(笑)、ポップ・ミュージックや“歌もの”をつくってもいいって、最初に認めてくれたのが彼女でした。「大丈夫、興味があるなら何でもやりたいことをやればいい。一つのことにとらわれる必要はない」って。例えば、今やっている「sentiment」のような音楽が好きな人がいれば、それ以前に自分がつくっていたような音楽が好きな人もいる。多くの人は、一度成功した音楽ジャンルに固執しがちで、でもマリは、「みんなが好きな音楽じゃなくてもいいし、自分がやりたい音楽をやればいい」って言うんです。そのマリの言葉で、他の人の好みを気にせず、自分の好きな音楽をつくればいいんだって気付いたんです。
今のツアーはとても充実していて、歌を歌ったり「sentiment」の曲をライブで演奏したりできている機会にとても感謝しています。でも、今の自分が何に興味があるかというと、音楽的な関心はすでにその先へと向かっていて。例えば、最近完成したばかりの5時間の音楽は「sentiment」とは異質で、とてもスローで、実験的で、ミュージック・コンクレートやフィールド・レコーディングのようなものに近い。だから、自分が今、そういう(「sentiment」みたいな)音楽しかつくっていないと思わないでほしいというか、実験的な音楽が好きな人たちも私のことを忘れないでほしい(笑)。“彼ら”のための音楽もある。つまり、一つのジャンルに縛られなくても、いろんな音楽を自由に作ってもいいっていう話なんです。
――ただ、「sentiment」での変化の背景には、歌を通して伝えたいことが生まれた、歌声を使わなければ伝えられないことがあることに気付いた、という意識もあったのでは?