注目のミュージシャン、クレア・ラウジーが奏でる「エモ・アンビエント」 ジャンルに縛られない音楽づくり
そんな時にマリと出会って、周りが誰も知らないようなディープでマニアックな音楽があることを教えてくれて。「5年後には流行るかもよ」って(笑)。彼女はアンビエント・ミュージックやミュージック・コンクレート、そしてローアーケース・ミュージック(※アンビエント・ミニマリズムの極端な形式)に詳しくて、しかもとても深いレベルで理解していた。それでマリが勧めてくれる音楽を聴くようになって、即興音楽やノイズ・ミュージックみたいな音楽をやっていた自分が、対極にあるようなスローで内省的な音楽にも興味を持つようになった。彼女のおかげで、新たな音楽の世界が広がったんです。
――興味を引いたのはどんなアーティストや作品でしたか。
クレア:グラハム・ラムキンやクリス・コール、それにオーレン・アンバーチのレーベル「Black Truffle」がリリースしている作品はどれも刺激的でした。個人的には、フィールド・レコーディング系の作品が好きでした。それと、前に住んでいたテキサスのオースティンに「Astral Spirits」というレーベルがあって、そこを運営しているネイト・クロスとは親友なんです。そのレーベルの初期のリリースの中には、マリが教えてくれたようなエレクトロ・アコースティック系の音楽に近いものがたくさんあって、よく聴いていました。
――クレアさんのBandcampに大量にアップされているような、フィールド・レコーディングの作品をつくるようになったのも、そうした音楽を聴き始めるようになってからですか。
クレア:たぶん2017年頃からだと思います。本格的にフィールド・レコーディングに興味を持ち始めたのは。Bandcampで「ミュージック・コンクレート」や「フィールド・レコーディング」のタグがついた音楽を探し回っていたら、ローレンス・イングリッシュが主宰するレーベル「room 40」を見つけたんです。それで彼の作品に出会い、フィールド・レコーディングの世界にドップリとハマって。フィールド・レコーディングって、音楽制作というだけでなく、自分だけの芸術的な探求みたいなものだって気づいたんです。とても神聖な作業であり、自分の心を揺さぶり、脳を興奮させるような体験が一人でできる。その時、これこそ自分が本当にやりたいことだって思ったんです。