給食で相次ぐ「子どもの窒息事故」はなぜ起きる?歯科医師が教える「身近な食べ物」を使った「お口のトレーニング」
「口腔機能発達不全症」の子どもが増えている
「口腔機能発達不全症」は以下の12個の項目で2個以上が該当すると、診断が下される可能性があります。 (1)大人の歯が生えるのが遅い (2)歯並び・噛み合わせが悪い (3)虫歯があって食べにくい (4)強く噛み締められない (5)噛む時間が長すぎる・短すぎる (6)片方側の歯で噛む (7) 舌の悪い癖(飲み込む時に舌が前に出る) (8)食べ方(量)にムラがある (9)発音が悪い (10)お口ポカン(唇の半開き) (11)お口の悪い癖(唇を噛み締めるなど) (12)舌の裏のスジの異常(短い) 児童の口腔機能を客観的に測定する方法として、唇の閉じる力(口唇閉鎖力)を診ます。年齢・性別ごとに基準値があるのですが、これを超えないと口腔機能発達不全症の可能性が高くなります。当院で今年の春休みに3歳から18歳までの266人を対象に行った検査の結果、56%が基準値を下回っていて、発達不全の可能性がありました。 口腔機能は年齢と共に向上していきますが、発達不全が普通の生活で正常になることはなく、機能が低い人は生涯を通して低いままだと言われています。しかし大人になると、ある程度は機能が成長するので、日常生活で機能の低さを自覚することは難しいです。 口腔機能は壮年期(40~64歳)の後半から衰え始めるのですが、発達不全の場合は低下の時期も早くなり、介護状態の前駆症状である全身フレイル(虚弱)の入り口「オーラルフレイル(口の虚弱)」になりやすい傾向があります。「たかがオーラルフレイル」と見過ごすことはできず、オーラルフレイルになると2年後には要介護認定リスク2.4倍、誤嚥性肺炎を含め死亡率2.1倍と日常生活や生死に関わる影響を及ぼすのです。実際に全国に先駆けて行った埼玉県志木市の集団口腔機能検査では60%の人に口腔機能の衰えがありました(75歳以上、対象者:260人)。 このように口腔機能発達不全症は生涯にわたり健康に影響を与えることから疾患指定されましたが、近年増加傾向にあるため、現在の歯科医療での最重要課題に挙げられています。最近、風車(かざぐるま)を口で吹いて回せない子、(誕生日ケーキの)ロウソクを吹き消せない子が増えています。これらは口腔機能発達不全症の典型的な症状で、当院にご相談に来られる親御さんも増加しています。