齋藤元彦再選「SNSで若者がデマに騙された」は本当か? 新聞・ワイドショーが報じない「井戸県政の宿痾」という大問題
宿痾の清算
齋藤元彦は、井戸時代にも続いてきたこのような採算性を度外視した――悪くいえば多額の公金注入ありきの放漫経営を前提とする――政治・行政との訣別を県民から期待されて県知事に就任した。そして実際に齋藤氏が就任直後から着手したのは、まさにこうした兵庫県に遺された長年の宿痾(しゅくあ)の清算であり、県民からもその手腕は一定の支持を得ていた。 井戸時代には財政的問題から後回しにされていた中学・高等学校の校舎修繕などに力を入れていたのも、大きく支持を広げたポイントのひとつだっただろう。今回の選挙で齋藤氏が10代~20代の若年層から圧倒的支持を集めたのは偶然ではない。「立花孝志やXの政治系インフルエンサーが煽ったから、10代20代が妄信して齋藤を支持するようになった」「若者がYouTubeやTiktokだけを見て『ネットde真実』に目覚めて齋藤になだれ込んだ」――というのは実情とはかけ離れている。「パワハラ」というタームにきわめて敏感なZ世代の大部分が齋藤氏を支持したというのは、彼の「パワハラ問題」を帳消しにするだけの恩恵が実際に彼らの生活に注がれていたことを示唆している。 とはいえ当たり前だが、議会にも行政にも長年主流派であり続けた「井戸派」はまだ根強く存在しており、齋藤氏の県政を快く思っていなかった。齋藤氏の改革はいわゆる「身を切る」タイプのそれに属していたため、一部の人びとからすれば面白くなかったのも当然だろう。 ただし、ここで強調しておきたいのだが、「議会や行政やOBにいた『井戸派(反齋藤派)』がメディアと結託して、今回の失職につながる陰謀をめぐらせた」のかというと、必ずしもそうとも言い切れないということだ。
最初は「お騒がせネタ」だった
SNS上では「齋藤つぶしの陰謀を県の既得権益者とオールドメディアが企てた(そして、それをネットメディアがひっくり返した)」という話がまことしやかにささやかれ支持されているが、実情はそうではなかっただろう。 私は近畿ローカル局で齋藤氏をめぐる「告発文書問題」がフィーチャーされだした最初期からその報道を視聴しているのだが、はっきり言ってしまえば、そのときのメディアのムードは「天地を揺るがす大スクープを入手!」「県職員たちの決死の告発!」という雰囲気でもなければ、「なんとしても齋藤をぶっ潰す!!!」という鬼気迫るものでもなかった。言ってしまえば「とくにネタもないし、これでも流しとくか」くらいの、本当にそれくらい軽い「お騒がせネタ」という空気だったのだ。 「万引きGメンとか、飲酒運転の取り締まりとか、オーバーツーリズムの迷惑観光客とかの定番ネタもさすがにやりすぎて飽きられてきたし、ほかに『けしからん奴だ!』と視聴者が食いつくようなネタないかな~」とテレビ業界人がなんとなく探していたところに、たまたま「兵庫県庁でトラブルがあったらしい」という情報が入り、「他に尺を持たせるネタもないし、これでも流しておくか」と放送し始めたのがすべての発端だったのではないか。当初は「おねだり体質」といった、いかにも低俗な雑誌に載りそうな面白おかしいキャッチコピーばかりがクローズアップされていたのもその表れだろう。 テレビ局がほんの「つなぎ」程度の軽い気持ちで始めたその報道に対して、水面下でくすぶっていた「井戸派」の人びとが「齋藤の首を取るチャンス到来!」とばかりに続々と乗っかり、あれよあれよという内に大火事になって、ついには百条委員会にまで発展する騒動になってしまった。
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