齋藤元彦再選「SNSで若者がデマに騙された」は本当か? 新聞・ワイドショーが報じない「井戸県政の宿痾」という大問題
「井戸県政」からの脱却
今回の一連の騒動と選挙において、おそらくこれが、兵庫県民以外にとってもっとも理解しがたい「背景文脈」であるように思う。 兵庫県には2001年から20年にわたって県政を長らく支配していた(齋藤氏と同じ総務系官僚出身の)前知事・井戸敏三氏がおり、齋藤元彦氏はその井戸長期政権からの決別と刷新の期待を受け、井戸氏が自身の後継者として推薦した対立候補を大差で破って当選した。 20年にもおよぶ井戸氏の県政の評価は賛否それぞれあるだろうが、少なくとも齋藤氏が、井戸時代にはだれも手を付けなかった「タブー」の領域に踏み込もうとしていたことは事実だ。その目玉は、県がバブル時代の末期から保有していた(そして阪神淡路大震災後に急激に不良債権化した)土地開発事業や不動産事業の見直しであり、これは井戸時代にもしばしばやり玉に挙がってはいたものの、清算されることはなかった。 井戸時代には、県の財政はどんどん悪化していった。むろんそのすべてを井戸氏の責任に帰するのは妥当ではない。というのも彼が就任した2001年は折しも「小泉改革」の旋風が起こっていた時期で、地方自治体にも大幅な予算カットという形でその余波が届いていたからだ。しかしながら、そういう事情があったことは差し引くにしても、井戸時代の兵庫県は概して「放漫財政」だったと言わざるを得ない。当人も朝日新聞のインタビューのなかで「(財政の)体力を超えて投資しすぎた面があった」と回想している。 兵庫県の行政問題を考える上で避けられない重大なターニングポイントは、やはり阪神淡路大震災だ。思うに大震災は、兵庫県にふたつの意味で禍根を残した。 ひとつは直接的な意味での「財政悪化」だ。阪神エリアの市街地に大きな被害をもたらし、社会経済に深刻な痛手を与えた震災からの復興のため、県は2兆円弱の負債を抱えることを余儀なくされた。そしてもうひとつは「震災復興のためだから」という建前のもと、その後の放漫財政が正当化されたことで、間接的な意味でも「財政悪化」を招いてしまったことだ。 とくに神戸市では「震災復興」の名のもとに、どんぶり勘定で湯水のように税金をつぎ込んで商業施設や住宅地が造成され、それらはことごとく赤字を垂れ流してきた。神戸は人口150万を数える巨大都市であり、その財政規模も他の多くの自治体とはその桁が違う。ピーク時の2002年度には神戸市の市債残高、つまり借金は3兆2000億円を超えた。
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