中学受験を断念し6年生で海外留学を決断した母子 「塾を辞めたい」息子のひと言から始まった新しい人生
── 海外留学をするにしても、親子での移住ではなく、寮などの選択肢もありますよね。 高橋さん:国内でもボーディングスクールが増えていて、なかでも海外の学校が展開するところは、国内にいながら海外の教育を受けられます。興味があったので調べたのですが、学費が高過ぎて厳しいと思いました。海外の全寮制の学校やホームステイでの単身留学ならば、親子2人で移住するより家賃や生活費が抑えられるので、安くなるとは思います。
ただ、私が息子と離れたくないという思いが強くありました。これまでずっと忙しく仕事をしていて、やりがいもあって楽しかったのですが、息子が高学年になり、だんだんと親離れが始まってきたのも感じていて。息子が巣立つ前に、ちゃんと向き合って過ごしたいと思うようになりました。
■「息子との時間を作りたい」 ── これまで仕事がかなり忙しかったそうですね。 高橋さん:私は雑誌編集の仕事をしているのですが、これまでは会社に出社して、編集部に朝から晩まで入り浸りという生活で、息子と一緒に過ごす時間は多くありませんでした。でもそれも、共働きの家庭が増えているのでうちだけではないし、当たり前だと思っていたんです。
息子は0歳から保育園に入りました。延長保育で夜まで預けることも多かったです。小さい頃は、「育児って、いったいいつまで続くんだろう」と思っていました。あまり夜も寝ない子で、抱っこして寝かしつけてもベッドに下ろすと起きてしまう。仕事も忙しくて常に睡眠不足でした。小学生になって学童に入ると、そこでも延長をして息子は夕食を食べてから帰宅するという生活で、毎日がただ、慌ただしく過ぎていきました。 でも、子どもがだんだん大きくなって手が離れてくると、ないものねだりではないですが、寂しさを感じるようになりました。これから先、高校生、大学生になったら私がいなくても何でもできるようになるだろうし、その前に仕事を少しセーブして息子と過ごす時間を作りたいと思うようになりました。でも、子供がもし「塾を辞めたい」と言わなければ、私の気持ちもこんなふうに変化していなかったかもしれません。