“ただの雑草”は宝の山!? 飛騨の山奥で出合った「野草研究グループ」とは?【第2回】
「河合は標高が600mあり、雪も多い地区なの。冬は音も色もない世界。山の黒と雪の白だけで水墨画みたいだよ。小さいころ、近所のおじいさんたちが農作業のときにドクダミのお茶なんかを持ってきていて、『飲んでいけよ!』って。ドクダミ茶は苦かったけど、お菓子も一緒にくれるから(笑)。まあ、当時は食べ物があまりなかったから、薬草だけじゃなくヘビやハチの巣やメダカとって食べたりしていてね」 そんな話に相槌を打ちながら先ほどの建物まで戻ると、「次に私たちの畑に案内しまーす!」と下出さん。畑? ジャガイモやニンジンでも育てているのかと思いきや、なんと畝(うね)をつくり、農業用の黒ビニールまで被せた本格的な雑草…いや立派な薬草畑に驚いた。こんなもの、いくらでも道に生えているのになぜ? 「そりゃ、もっと歳をとったら歩くのがしんどいもの。だからすぐ近くで採れるように、まだ動けるうちに野草の畑をつくっておこうって。あっちがオオバコ畑、ヨモギ、ドクダミ、タンポポ、そしてメナモミ。みーんなうちの野草茶の材料です」
その会自慢の野草茶は、「手摘み野草茶」と「手摘み野草茶 まろやか葛ブレンド」の2種類だ。飲みやすいよう、ほうじ茶や大麦、ハトムギのなじみのある味をベースに、河合町で採れたクマザサ、オオバコ、クコ、スギナ、クワの葉、ドクダミを入れている。飲んでみると、薬草独特の苦みもなく体にスッと入るやさしい味わい。全国にファンがいるらしい。 「私たちが野草茶をつくった後に、村上先生(前話に登場した、元徳島大学の薬学博士、村上光太郎さん)がこちらに来て『空気がよく水はミネラルが多いから、河合町の薬草はいい』とおっしゃって。『これもいいけれど、ひとつ自分用に調合してみない?』と、さまざまな野草の入ったタッパーと秤を持ってきてくれたんです」
飲みすぎに効果あり!? マイ野草茶をブレンドする
マイ野草茶づくりを指導してくれるのは、メンバーのひとりで京都から嫁いできた畑美貴さん。会で一番の若手である。野草茶を日々、飲んでいるおかげかどうかはわからないが、髪が黒々として背筋がピンと伸びていてうらやましい。 さてズラリと並べてくれた乾燥した野草はどれもそれぞれ味も違えば成分も違う。私の体の悪いところを言い出したらきりがないが、畑さんのおすすめの二日酔いによいとされる葛をたっぷりとブレンドしてみた。7gの野草を詰めたパックを煮出すと、2リットルの野草茶ができるという。ああ、これで安心して好きな日本酒をとことん飲める。