自己流で“やってはいけない”趣味の代表格は「歌」 では、“自己流のほうがいい”趣味とは――?
今年こそ何か新しい趣味を始めようと思い立った時、「お金がかからない手軽なものを」と考えるのが人の性。だが作家で国文学者の林望氏は、きちんと人に習って身につけるべき趣味と、自己流だからこそ最大限に楽しめる趣味がある、と説く――。 (前後編の後編) *** ※この記事は『結局、人生最後に残る趣味は何か』(林望著、草思社)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えしています。
自己流でやってはいけない趣味
さて、趣味を始めるにあたって知っておきたいのが、自己流でやってはいけないものと、自己流で取り組んでもよいものがあるということです。 前者の代表が音楽です。楽器などを習得する場合は、ちゃんとした先生のもとで個人レッスンを受け、レッスンを受けたら、次のレッスンまでに先生から教わったことを反復練習し、次のレッスンに備える、という地道な繰り返しが大切です。 これは歌に関しても全く同じです。YouTubeでは、さまざまな先生が歌唱テクニックを解説していて、非常に便利な時代になったのを感じていますが、現実にはYouTubeだけで歌を学ぶのは不可能だと言ってもよいと思います。 というのは、耳で外から聞く自分の声(これを“外声がいせい”といいます)と、内側から骨を伝って聴いている自分の声(こちらは“内声ないせい”といいます)は全然違います。歌が苦手な人は、この音の違いがよくわからないところに問題があるわけで、いくらYouTubeで歌唱法を学んでも根本的な解決にはつながりません。 ちゃんとした先生のもとで、発声法をマントゥーマンで教われば、 色々な方法で声の出し方を矯正してもらえます。実際に歌ってみて、「それです、それです、その声です」とか「それは駄目です」などと逐一その場で言ってもらいながら、正しい声の出し方を自分でも実感しつつ習得していけるというわけです。 独学では内声しか聴けないので、ほんとうにどんな発声をしているのか認識できません。自分では良い声のつもりでも、外に出ている声は全然良くないということが大いにあります。不思議なことに、音程までも内声と外声では違って聞こえたりすることもあるのです。 個人レッスンというと、さぞかし高額なレッスン料がかかると思われがちですが、実際にはそれほど法外なお金はかからないものです。