ドーナツ市場のガリバー・ミスタードーナツがV字回復…¥100やめてコラボ、商品力でファン定着
ダスキンが手がけるドーナツチェーン「ミスタードーナツ(ミスド)」の業績が、V字回復している。2010年代の市場縮小や競争激化による採算悪化に伴い、約3割の店舗削減を余儀なくされたが、かつての勢いを取り戻した。国内のドーナツ市場で約8割のシェア(市場占有率)を握る「ガリバー」復活の背景を探った。(北野浩暉) 【画像】無人決済システムを導入したミスタードーナツの持ち帰り専門店(東京都新宿区で)=ダスキン提供
無人決済持ち帰り専門店
9月下旬、JR信濃町駅(東京都新宿区)の駅ビルの一角に、ミスドでは初となる無人決済システムを導入した持ち帰り専門店(約35平方メートル)が開業した。出入り口にゲートが設置された空間に入り、ショーケースから商品を選んでレジの前に商品を載せたトレーを置くと、選んだ商品が自動でレジに表示され、決済ができる仕組みだ。
ミスドは、「近くに店がない」という顧客の声が多いのが課題だった。来店客の約8割を持ち帰り客が占める特徴を生かし、力を入れるのが、都市部の駅前などの狭い場所でも出店しやすい持ち帰り専門店の出店だ。無人決済システムの導入で顧客の利便性を高める狙いがある。
ミスドの9月末時点の店舗数は前年同月末より22店多い1030店となった。このうち約5%が持ち帰り専門店だ。
店舗数拡大に合わせ業績好調が続く。24年9月中間決算でミスドが大半を占める飲食事業の売上高は、前年同期比20.1%増の311億円だった。7月には定番品19種類の値上げに踏み切ったが、店舗数拡大で来店客も増えたという。25年3月期も前期比15.7%増の676億円と6年連続で増加する見込みだ。
ダスキンの大久保裕行社長は、「持ち帰り客は家族の分も買うため、店内飲食客より1人当たりの単価が大きい。専門店の拡大が好調につながっている」と手応えを語る。
「100円セール」廃止
ミスドは、ダスキン創業者の鈴木清一氏が、経営について学ぶため渡米した際に食べたドーナツに感銘を受け、米チェーンと提携し1971年に大阪府箕面市に1号店を開業。日本にドーナツ文化を根付かせ、店舗網を拡大してきた。