ドーナツ市場のガリバー・ミスタードーナツがV字回復…¥100やめてコラボ、商品力でファン定着
だが、2010年代に市場は曲がり角を迎えた。健康志向の高まりで、カロリーの高いドーナツを敬遠する消費者が増えて人気は低迷。さらに、14年にはコンビニエンスストア各社が本格的にドーナツを取り扱うようになり、競争が激化した。
ミスドは、期間限定の100円セールの回数を増やすなどして販売を回復させようとしたが、逆に採算悪化を招き、不採算店の閉鎖に追い込まれた。店舗数はピークの13年3月末時点で1376店だったが、その後、年間で数十店舗ずつ減少することが常態化した。
戦略の見直しに踏み切ったのは16年だ。和田哲也・事業本部長は「価格競争のなかで、新たな価値を伝えきれていなかった」と振り返る。20年以上、毎月不定期で続けた100円セールは廃止。さらに、当時は子連れの主婦層など30~40代の固定客が中心だったが、顧客のニーズをきめ細かにすくい上げ、若年層など新たな顧客の開拓を目指すことにした。
甘くない「ゴハン」、おしゃれな店舗
「常に新しいブランドになっていく必要がある」(和田氏)との方針の下、力を入れたのが、商品力の強化だ。17年には、他企業の人気ブランドと共同開発する「ミスドミーツ」シリーズを、新たにスタート。第1弾の宇治茶専門店「祇園辻利」とのコラボは現在も続いており、新商品の発売を待ちわびるファンも多い。同年には、店内でパイやトーストなどの軽食を提供する「ミスドゴハン」シリーズも始めた。
このほか、居心地の良さを向上させるため、店舗は、黒を基調とし、おしゃれで清潔感が伝わりやすいカフェのようなデザインに改装し始めた。
改革効果の本格化を見込んでいた矢先に、見舞われたのが新型コロナウイルスの感染拡大だった。だが、商品を入れるショーケースに扉を付けるなど衛生管理を強化しながら営業を続けるうちに、巣ごもり需要の拡大に合わせ、持ち帰り販売が増加。コロナ禍は、想定外の大きな追い風となった。
その後は、利便性の高い場所を中心に出店を強化してきた。郊外では、21年から、ドライブスルー店舗の充実に本腰を入れ始めた。22年3月末時点の店舗数は、9年ぶりに前年同期を上回った。