【レポート】『北アルプス国際芸術祭2024』開催中! 水と空気の恵みを存分に感じながら、アートを体験しよう。
北アルプスの澄んだ空気と水に守られた地で開かれている『北アルプス国際芸術祭2024』。その水と空気の恵みを存分に感じられるアートが待っています。 【フォトギャラリーを見る】 「北アルプス国際芸術祭」は北川フラムをディレクターに2017年から3年に一度、開催されている芸術祭。3回目になる今年は国内外から37組のアーティストが参加、パフォーマンスを含め、38点の作品が並ぶ。 開催地は長野県の北西部に位置する大町市。JR信濃大町駅付近の「市街地エリア」、〈七倉ダム〉などがある「ダムエリア」、北アルプスからの豊富な水が流れる「源流エリア」、木崎湖など3つの湖がある「仁科三湖エリア」、糸魚川静岡構造線の上にある「東山エリア」とそれぞれ個性的なエリアに分かれている。
東山エリアにある「八坂」という集落は質のいい竹で知られており、職人も多い。台湾で活動するヨウ・ウェンフー(游文富)は〈八坂公民館〉のまわりを竹で編んだ巨大な“波”で覆ってしまった。水田の向こうに、ゆるやかにうねる竹の構造物が広がる。 「風は目には見えないけれど肌で感じることはできるし、風には形があると思う。この作品は竹で風を見えるようにしています」(ヨウ・ウェンフー) 9月末、稲の刈り入れのシーズンには金色に実った稲の向こうに、同じく金色に輝く竹を見ることができた。今は収穫も終わって、稲の姿はない。 「会期が終われば私の作品もなくなってしまうけれど、この美しい景色は永遠に記憶に残ると思う。私にとっては形が存在することより記憶に長く残ることが大切なのです」(ヨウ・ウェンフー)
同じく東山エリアの「美麻」という集落は地名からわかるように麻の栽培で栄えた場所だ。国の重要文化財でもある〈旧中村家住宅〉にはその歴史を彷彿とさせる佐々木類のインスタレーションが設置されている。草のシルエットが浮かび上がるガラスのスクリーンはかつての麻畑に生えている植物をガラスに封じ込め、熱したもの。茎や根は灰になり、植物の内部にあった空気は泡となる。 「ここに麻畑があって人々の暮らしを支えていた。その記憶をとどめるタイムカプセルのような作品です」と佐々木はいう。 ガラスは〈黒部第四ダム〉の建設事務所で使われていたもの。工事現場で働いていた人々の大半はこの地を去ってしまった。 「大町では人もものも動いていて、歴史的なものも意外に残っていないんです。その中で残っているものをすくいあげている」(佐々木)