【レポート】『北アルプス国際芸術祭2024』開催中! 水と空気の恵みを存分に感じながら、アートを体験しよう。
韓国出身のソ・ミンジョンは巨大な箱状の発泡スチロールに焼けた木が倒れてきたようなインスタレーションを作った。発泡スチロールの白と木の黒が対照的だ。 「人工的なマテリアルの象徴として、舞台で雪のかわりに使われることもある発泡スチロールを設置しました。でも氷山のような自然物にも見えて、その両面性が面白いと思います」(ソ・ミンジョン) 表面が焦げた木は気候変動により多発している山火事を連想させる。生々しくもあり、詩的でもある作品だ。
〈旧相川トンネル〉は明治22年ごろ、大町市と八坂村をつなぐために人力で掘られたトンネルだ。トンネルの先には北アルプスの景色を楽しむ展望台などが設えられていたが、1987年に廃道となった。そのトンネルの中に置かれているのは南アフリカ出身のルデル・モーの作品だ。付近の土と八坂の竹でできたオブジェは、魚か動物のように見える。 「2つの場所をつなぐトンネルという場所は、目覚めと眠りの間にある場ともいえます。そこに土と竹という、容易に形を変えることができる素材で作った彫刻を置きました」(ルデル・モー) 会期終了後は土に還ることになる。一時の夢のような、生と死の循環の中にある作品だ。
仁科三湖エリア、〈仁科神社〉の北にある森を歩いていくと、大きな水滴のようなインスタレーションが現れる。ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレットの《ささやきは嵐の目のなかに》という作品だ。リサイクルされた眼鏡のレンズを連ねて作られている。水滴のように見える作品は湖や雪解け水など、さまざまに姿を変えるこの地の水からインスピレーションを得ている。 「作品の中に立って見上げると森が、見下ろすと湖が見える。レンズの両側に立つとお互いの姿が昆虫の複眼みたいに見えるのも面白いと思う。レンズの効果で空中に小さな絵がたくさん現れたようにも見える」(ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット)