【レポート】『北アルプス国際芸術祭2024』開催中! 水と空気の恵みを存分に感じながら、アートを体験しよう。
芸術祭の拠点の一つとなるJR信濃大町駅近くには、ちょっと変わった居酒屋(?)ができた。インドネシアの作家、ムルヤナの《居酒屋MOGUS》だ。中に入ると毛糸で編んだ野菜や魚が並んでいる。来場者はお皿にその“食材”を盛って、自分の好きな「フードモンスター」を作ることができる。作者はパンデミックで会食ができなくなったときにこの作品を作り出した。会場も実際にもとスナックとして使われていた場所だ。みんなで飲んで、食べて、おしゃべりした、誰にでもある記憶とつながっている。
〈七倉ダム〉は岩石や土砂を積み上げて作る「ロックフィルダム」という形式のダムだ。そこには磯辺行久が《北北西に進路をとれ》という作品を設置している。偏西風など、北北西方向からの影響を可視化する作品だ。 芸術祭のメインビジュアルを担当したビジュアルディレクターの皆川明は「やはり住んでいる人全員が感じているであろう水の豊かさ」が「北アルプス国際芸術祭」の一番の魅力だという。 「芸術祭のコンセプトである木・土、そして空の雲はそれぞれ水を蓄えています。また私たちの体の中に蓄えられている水も生命にとって絶対に必要なものですよね。体に対する精神という意味では、芸術が水の役割を果たしているととらえています。またこの芸術祭は広いエリアで開催されていて、移動する間に自然や環境がある。『北アルプス国際芸術祭』に限ったことではありませんが、アートとアートの間に豊かな自然があるから、作品の余韻をじっくり味わうことができると思います」(皆川) 体の内や外を循環する水が生命を維持してくれるように、アートが精神を満たしてくれる。北アルプスではその水や森と人とが長い時間をかけてつながってきた。流れる水音を聞きながらアートを体感できる芸術祭だ。
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北アルプス国際芸術祭 2024
長野県大町市内各所。~2024年11月4日。会期中水曜定休。9時30分~16時30分。
text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano