「東京の離島」と「石垣島や宮古島」で分かれた明暗。“観光資源に差がない”のに観光客数が伸び悩む理由
運賃を値上げも、乗船客数が増加
2024年12月期第1四半期の売上高は31億3400万円、売上予想に対する進捗は20.7%。滑り出しは上々だと言えるでしょう。 東海汽船は5月1日から旅行運賃を15%引き上げました。貨物運賃も10%増額しています。第1四半期は値上げが行われる前の実績。新企画ツアーによる集客が奏功していることや、座席制限がなくなったこと、団体利用が増加しており、乗船客数が増加したのです。 値上げ前の駆け込み需要が起こっているとは考えづらく、観光客数が確実に回復しているのでしょう。中期的には、値上げ効果によって収益改善が見込めるのです。 ただし、東海汽船は伊豆諸島や小笠原諸島の観光産業に多くを依存しているため、島内の観光業そのものの発展がなければ、長期的な成長が見込めません。ここが一番のポイントです。
石垣島と宮古島に比べ、観光資源に大きな差がないのに…
伊豆諸島で観光客数が最も多いのが大島。2022年の観光客数は14万6000人。次いで多い八丈島が7万4000人ほど。コロナ前の2019年と比較して7~8割程度まで回復してもこの数字なのです。 同年の石垣島が90万8000人、宮古島が84万5000人。同じ離島でも、観光客数にこれだけの差が生じています。 これらの島の観光資源に大きな差はありません。スキューバダイビングやシュノーケリング、サーフィンなどのマリンスポーツ、フィッシング、イルカウォッチングなどの離島らしいアクティビティが盛んな点はよく似ています。 しかし、リゾート地として伊豆諸島を思い浮かべる人は少ないでしょう。実際、石垣島にはANAインターコンチネンタル、クラブメッド、宮古島にはヒルトンが出店していますが、伊豆諸島や小笠原諸島に世界的に展開するホテルチェーンはありません。東海汽船の筆頭株主である藤田観光ですら、伊豆諸島・小笠原諸島には出店していません。
「1973年の絶頂期」から下降線を辿っている
日本は1970年代にかけて離島ブームが起こり、大島は1973年に観光客数が83万人を超えて絶頂期を迎えます。しかし、そこから下降線を辿ることとなりました。 東京都は2023年度から2032年度までの「東京都離島振興計画」を策定しています。これは伊豆諸島地域の振興の方向性を示すもの。観光振興における10年後の姿として、「島のアクティビティ開発が進み、宿泊施設の多様化が図られ、都民や国内外の旅行者を魅了できる環境が醸成されている。」という項目を盛り込んでいます。 東京都は、町村等が実施する宿泊施設の誘致や整備、滞在価値向上のための取り組みを支援するとしています。また、廃ホテルの撤去や跡地の活用もバックアップする予定です。