オランダの街に「黄色い箱」が続々登場。道端で''空き缶の寄付''を募るワケ
プラスチックや缶を捨てずに資源として回収し、再利用に回すことができるというのはデポジット制が導入された目的であり、これが機能していることは歓迎すべきことだ。また(本来であれば住民すべての収入が向上することが望ましいが)一部の人にとって金銭的な足しになること自体は前向きに捉えられている。
新たな問題にアプローチする「黄色い箱」の設置
一方で新たに問題となったのは、デポジット制が拡大されたと同時に、公園や道端にあふれるごみが増えたことだ。これは、ペットボトルや缶を探すためにごみ箱の中身を出す人が増え、一度取り出されたその他のごみがそのまま放置され、周辺に散らばるためだ。こうした状況がしばらく続くなか、街にはある変化が起きた。 これまでの街のごみ箱に、缶・ボトルホルダーが取り付けられたのだ。こうすれば、缶やボトルを捨てる人は、ごみ箱の中ではなくこのホルダーに置くだけでいい。缶・ボトルを回収したい人はごみ箱をひっくり返さなくてもいい。
筆者は、こうした素早い市の対応に目を丸くしていたのだが、その数ヶ月後、さらに新たな変化を目の当たりすることになる。缶やボトルを安全に回収するための黄色い箱が登場したのである。
これは「デポジット・ボックス(Statiegeldbak)」と名づけられたこの黄色い資源寄付のための箱で、市民が自ら資源を回収できるように、オランダの若手デザイナーであるパブロ・カンタトーレさんとアントニウス・ヤンセンさんによって考案された。上からボトルや缶を入れ、回収するときは下のレバーを引くだけだ。缶であれば最大80本保管することができ、水が通る構造になっていることで、雨が降れば中にはいっているボトルや缶が自然の力で洗浄されるので衛生的でもある。 パブロさんとアントニウスさんは、実際にボトルや缶を回収している人たちに聞き込み調査をするなかで、ボトルや缶を探す際、ごみ箱の鋭利なものに触れて怪我をしてしまったり、ペットの糞などにより病気になってしまったりすることがあるという事実を知り、こうした安全に資源を回収できるデポジット・ボックスを考えついたという。 さらに、わかりやすくオレンジに色づけられた郵便ポストから着想を得て、この寄付ボックスを明るい黄色にすることを思いついたのだそうだ。たしかに、「黄色いボックスはボトル・缶の資源をいれるもの」と言えば、提供する人や回収する人、誰にとってもシンプルでわかりやすい。 既存のごみ箱にかけられていたボトル・缶ホルダーは人々がそれ以外のごみを引っ掛けてしまうため、今後回収され、黄色い寄付箱に置き換えられていく予定だという。 この黄色い寄付箱は、2024年6月現時点までに、アムステルダム市内やショッピングセンター、ロッテルダム市などをはじめとするオランダ国内100箇所に設置されており、その他多くの自治体や商業施設などから関心が寄せられているという。オランダのマキシマ王妃までが、包装容器廃棄物基金の会合に足を運び、この「デポジット・ボックス」の取り組みについて熱心に話を聞いたというところからも、このトピックに対してのオランダの本気度がうかがえる。