“一枚上手”だった日銀 今後の金融緩和は? 住宅ローンは? 政策修正めぐる5つの「Q」
Q3:政策修正はなぜ突然決まった?
今回の決定はその唐突感が話題となりました。予想を外した専門家は「市場との対話を軽視している」あるいは「唐突な金融政策変更は中央銀行としての信頼を損ねる」などと酷評しますが、筆者が思うに今回は日銀の作戦勝ちです。というのも、YCCの修正は「いきなり感」が不可欠だからです。事前に利上げ観測(政策の修正観測)が広がってしまうとオペに売りが殺到してしまい、かえって混乱を招いてしまうという事情があるためです。 もし、仮に今回の政策修正が1カ月前に予測可能な状態になっていたとしたら、国債を保有する投資家は可能な限り多くの国債を0.25%の利回り(≒高い債券価格)で日銀に売却したはずであり、オペが持続不可能になっていた可能性があります。「黒田総裁の任期中に政策変更はないだろう」というある種の油断がまん延していたこのタイミングを逃さなかった日銀が一枚上手だったと筆者は思います。
Q4:日銀は今後「出口戦略」に舵を切る?
筆者は2023年の賃金・物価動向が、日銀の政策転換を促す方向に動くとみており、その点で企業の価格設定スタンスに注目しています。特に注目すべきは中小企業・非製造業の販売価格判断DIで、現在はバブル時の頂点に比肩する勢いで上昇し、値上げの裾野拡大を印象付ける領域に達しています。 これまで企業はコストプッシュ型のインフレに直面した際に十分な価格転嫁ができず、結果的にそれは賃金の下押し要因になってきました。しかし、深刻な人手不足と投入物価の上昇に直面する企業は、最後まで値上げを我慢してシェアを守ろうとする消耗戦に距離を置き始めたようにみえます。2023年もこうした賃金上昇を伴った物価上昇が観察されるようだと、日銀は出口戦略に舵を切る可能性が高まるでしょう。
Q5:住宅ローンへの影響はどうなる?
なお最後に生活への影響ですが、気になるのは住宅ローンでしょう。結論を先取りすると、既に住宅ローンを組んでいるほとんどの人にとって、今回の政策修正による直接的な影響は限定的だと思います(「直接的な」としたのは、金融環境の変化を受け、各行の個別戦略で金利の優遇幅を調整するケースが考えられるからです)。 というもの、今回の(事実上の)長期金利の引き上げによって上がるのは新規に組む「固定型住宅ローンの金利」に限定されるからです。多くの人が利用している「変動型」の住宅ローンは基本的に上がりません。なぜなら変動型の住宅ローン金利は、日銀が定める短期金利(現在はマイナス0.1%、今回変更なし)に連動するからです。
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