「シンプルに言ってしまえば、詐欺の上に成り立っている性行為です」――子どもを手なずける「グルーミング」とは #こどもをまもる
背景にある子どもの孤独感
では、子どものどのような部分が利用されるのか。櫻井さんの研究によると、「孤独感」がキーワードだという。とくにSNSを介してのグルーミングは、その傾向が顕著に表れる。 「親との関係がうまくいっていない、友人関係に悩んでいるなどの理由で孤独感を抱いていると、加害者はその孤独感を利用する。そして親身を装って相談に乗り、『理解者』を装い、相手の信頼を得ます。十分信頼を得た段階で、たとえば居場所がないと感じている子どもに『うちに来たら居場所があるよ』などと誘導する。また、自信のなさを抱いている子は、ほめられるとうれしくなるので、上手にほめるわけです」 加害者側がわざと自分の悩みを打ち明けたりする場合もあるという。 「孤独感を抱いている子どもは、自分も傷つきを感じているので、相手が悩みを語ると共感してしまう。その結果、相手に寄り添ってあげたいという感情が湧いてくる。そういったなかで、画像を送るようにとか、会おうと持ちかけられると、応じてしまうわけです」 難しいのは、子どもの側がなかなか「自分は被害者だ」という実感を持てないことだ。自分の裸の写真を相手に送ったとしても、相手がほめてくれると、「信頼している相手からほめられてうれしかった」と感じることもある。 「性被害に遭った子どもに話を聞くと、『だまされてなんかいない』と主張することもあり、被害を被害と認識できないでいることがあります」 小学生など年齢が低い場合は、知識もあまりないので、自分がされていることの意味がわからない場合がある。思春期になり、いろいろな情報や知識を得て初めて、自分が性的な被害を受けたのだと気づく。数年たって初めて親に相談し、性被害が発覚する場合もある。 また、子ども時代のグルーミング経験がトラウマとなるケースも少なくない。その影響で、大人に対する不信感をぬぐえない、恋愛関係に自信を持てないなど、生きづらさを抱える場合もある。