「シンプルに言ってしまえば、詐欺の上に成り立っている性行為です」――子どもを手なずける「グルーミング」とは #こどもをまもる
グルーミングは一種のマインド・コントロール
社会心理学者で、マインド・コントロールについて実証研究を行っている西田公昭さん(立正大学心理学部対人・社会心理学科教授)は、グルーミングはマインド・コントロールの一種だと捉えている。 マインド・コントロールとは、相手に気づかれないよう行動や考え方に影響を与え、意思や行動を誘導するコミュニケーション手法のこと。未成年者の場合、まだ性について知識不足で価値観が確立していないため、加害者の価値観を植えつけやすい。 加害者の社会的地位が高かったり、スポーツや音楽、アートなど未成年者が憧れる分野で才能や技術を持っていたりする人の場合はなおさらだ。尊敬できる人から“目をかけられる”と、マインド・コントロールされやすくなる。 「まず信頼関係をつくり上げ、自分がいかにすごい人間かという権威を植えつけ、すべて自分に任せればうまくいくと誘導していく。たとえばスポーツの監督やコーチ、塾や学校の先生など、強い好意を抱き、信頼している存在で、しかも相手が『教える立場』である場合、自分にとって悪いことをするはずがないと思いがちです。わいせつ画像や性行為の要求にしても『自分を誰よりも深く愛してくれる人の自然な要求なのだから、それに応えないといけない、いやらしいなどと嫌悪を感じる自分は、悪い子だ』とか、スポーツの世界の場合、『強くなるためには性的感情に慣れて大人にならなきゃいけない、これは訓練だ』などと言われて、信じてしまう。それから宗教者、霊能者や占師にマインド・コントロールされて、オカルト的な恐怖から逃れる特別な力を与えるためなどといった理由づけで、性被害に遭うケースもあります。被害者は、犯人の説明に疑問を抱いても否定する確証がなく、大人の言うことに従わないといけないと思ってしまう」
男子が被害者になるケースも少なくない
これまではグルーミングというと、どちらかというと女子の被害について語られることが多かった。しかし実際には、男子が被害に遭うケースも少なくない。 櫻井さんの研究グループが行ったオンラインによるモニター調査によると、18歳未満で「性的な自画撮り画像の送信経験」は、男女比較で男子のほうが多かった。また、ネットを介して知り合った人とその後、会うことになり、身体的な性被害に遭った割合も、男女でほとんど差がなかった。 男子の場合、女子以上に、被害を親などに言えない傾向が強いという。言ってもわかってもらえないという気持ちもあるし、被害を受けていること自体が恥ずかしいと感じ、親に打ち明けられないケースは多い。 「たとえ親がわが子の被害を知ったとしても、男子の場合、女子以上に、親が被害申告をためらうことが多いようです」(櫻井さん)