もしあの時、W113型SLを買っていれば……。憧れに終わってしまったメルセデスへの想い
自動車ジャーナリストのレジェンド岡崎宏司氏が綴る、人気エッセイ。日本のモータリゼーションの黎明期から、現在まで縦横無尽に語り尽くします。 岡崎宏司の「クルマ備忘録」 時機を逸してしまうと二度と巡り会えないのは人もクルマも一緒。MB(メルセデス ベンツ) SLK230コンプレッサーの国際試乗会に参加した筆者は、ずっと憧れだったW113型SLと迷ったあげく、SLK230を手に入れたのですが……。
MB SLKと2代目SL、、どっちにする!?
1996年のある日、僕はヨーロッパへ飛んだ。MB(メルセデス ベンツ) SLK230コンプレッサーの国際試乗会に参加するためだ。 SLKのいちばんのウリは、スイッチ一つの操作でHT (ハードトップ)が電動開閉することだが、僕もここに惹かれた。 基本的にはソフトトップの方が好きなのだが、例によって「新し物好き癖」がメラメラと燃え上がり、電動開閉HTが気になって仕方がない。 で、試乗会で実際に体験して、ますます強く惹かれることに。クーペの快適性とオープンの爽快さを「スイッチの操作ひとつで」楽しめたからだ。
加えて、HTを開閉している時の周囲の目を引くことも、楽しく心地よかった。 当時のわが家には、アルファ155とアウディ 80アバントがあったので、3台目が2シーターオープンというコンビネーションもいい。 ところで、電動開閉式HTの歴史は1934年のプジョー401Dから始まる。しかし、一般に広く知られるようになったのは、1957年の「フォード フェアレーン500 スカイライナー」が初めて。 僕もこのフォードが初体験だった。明るい2トーンカラーと伸びやかなシルエットは、クローズドでもオープンでもカッコよかった。まさに「華やか!」そのものだった。 人前で大きなHTを自動開閉する時の「どうだ!!」感も半端ではなかった。だから、このクルマをデーラーから借りた日の夜、僕はすぐ、赤坂TBS前の「自慢グルマの溜まり場」に向かった。