もしあの時、W113型SLを買っていれば……。憧れに終わってしまったメルセデスへの想い
端正で個性的、華やかで控えめ、、そんなW113型SLは、多くの女性をも惹きつけたようだ。LAのビバリーヒルズエリア、南仏の海沿いの街辺りで、女性+SLが演じる素敵なシーンをよく見かけた。 サイズは4.54×1.83×1.32m。コンパクト派を自認するわが家の基準を超えてはいるものの、取り回しもいいし、運転もしやすいので、なんとか許容範囲に入る。 試しに家内に運転させてみたのだが、「いいわよ、これなら」と一発合格だった。 僕が狙っていたのは250SLだが、性能も必要にして十分。、、いや、十分というよりも、「250SLはかなり走る!」といった方がより正確な評価だと思う。 日常的には、穏やかでリラックスしたドライブが楽しめる。だが、もしも、腕利きが「その気になって」鞭を当てたら、その戦闘力は半端なものではないことはすぐわかった。
エレガントなルックスを含めて、そうした奥行きの深さも、僕が250SLに強く惹かれた理由になっている。 今は1500~2000万円といった高価格だが、30年前は当然、ずっと買い易かった。 SLK国際試乗会の時、僕はメルセデス本社の「クラシック通」の人に、「250SLのあれこれ」を詳しく聞こうと思っていた。 そして聞いたのだが、日常的に使うにしても問題はないし、メインテナンス面でも心配はないということだった。 「さすが目の付けどころが違う」とか、「岡崎さんにとても似合う」とか、いろいろ持ち上げられて舞い上がり気味になり、「ほしい!」という気持ちはさらに強くなった。
ところが、そんな話の輪の中にSLKの開発責任者が加わって、話は意外な方向に急展開。 「岡崎さん、250SLは素敵です。でもですね、、SLKを開発した私としては、岡崎さんにはまずSLKに乗っていただきたい。SLは先に送って、SLKを旬の内に乗っていただきたいんです!」と熱い言葉が、、。 すると、周りも「そうだなぁ、SLは先に送ってもなんの問題もないし、、旬のSLKに乗って、東京で目立ってほしいですね!」と、風向きは一変。 で、芯の弱い僕はそんな風向きの変化に釣られて心が揺らぎ、、その場で、日本の広報担当者に、SLK初入荷の1台を確保してほしい旨をお願いすることになってしまった。 最新モデルのSLKと、クラシック化しつつあったW113 型SLのどちらを選ぶか、、ということ自体が、「まともではないね」といわれても仕方がない。