京都・奈良で観光“復活”の兆し 4月、5月の「どん底」からなぜ?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や海外からの旅行客の減少を受け、観光需要は大きく落ち込みました。国内随一の観光地である京都・奈良でも、4月から5月にかけて観光客が激減。一方、6月以降は徐々に活気が盛り上がりつつあるそうです。どのような需要が伸びたのでしょうか? また今後の見通しは? 旅行業関係者や専門家に聞きました。
「例年の半分以下」「目に見えて少ない」
「5月の客室稼働率は前年同月の100分の1程度でした」―― 1909年創業の老舗「奈良ホテル」(奈良市)は緊急事態宣言下、どん底とも言える経営状況となりました。同ホテルの担当者は「4月は稼働する部屋が1日2~3部屋という状態が続き、このままだとどうなるのかと思った」とも述べています。 観光庁によると、最も落ち込んだ2020年5月における国内宿泊施設の客室稼働率の全国平均は前年同月よりも50.3ポイント減の12.9%と低調でした。特に京都府は64.9ポイント減の6.2%、奈良県も47.1ポイント減の6.5%と、いずれも全国平均以下の極めて低い水準でした。 外国人旅行客に絞って見ると、京都が99.5ポイント減、奈良は99.4ポイント減となりました。 京都・奈良を象徴する観光スポットでも、その影響は如実に現れました。清水寺(京都市東山区)の広報担当者は「6月以降、拝観者の数は多少増えていますが、元に戻ったとは言えない状況」と語り、東大寺(奈良市)の広報担当者も「拝観者は少しずつ増加していますが、8月のお盆の時期は例年に比べて目に見えて少なく感じました」と同調します。
観光客増加の兆し
そんな中、夏に入り観光客が戻りつつあるそうです。
観光庁の集計では、全国の客室稼働率は6月が22.8%、7月が30.4%(速報値)。依然として低い水準ではあるものの4、5月に比べると回復しています。奈良県庁の担当者は、「観光業は依然厳しい状態」としつつ、夏以降については「宿泊施設によって状況はまちまちのようですが、なかには満室になったところもあるという話も入ってきています。奈良市内では観光客が戻りつつあり、徐々に修学旅行生の姿も増えてきています」とのことです。 奈良ホテルでも5月の落ち込みから一転、6月は前年の5割弱、7月はほぼ同水準にまで回復。8月に至っては上旬の客室稼働率が昨年をわずかながら上回っているそうです。