百貨店は客・従業員をどう守るのか? 「集客」と「3密回避」のはざまで【#コロナとどう暮らす】
新型コロナウイルスのまん延に伴う政府の緊急事態宣言が5月中旬以降段階的に解除され、休業要請されていた業種も順次営業を再開しました。その中、Yahoo!ニュースのコメント欄に、百貨店の従業員と思われる方から「お客様への配慮、感染防止策は重視するが、働く側への配慮は軽視されるだろうといままでの対応で予測できる。従業員食堂やトイレなどは3密の極み。私は疾患を持って働いているので休業要請解除は怖くて仕方ありません」との声が寄せられました。集客してこそ収益が上がるビジネスモデル。一方で、集まり過ぎると「3密」状態を招き、客も従業員も危険な状態になってしまいます。今後、百貨店はどのように客・従業員の安全を確保しながら、利益を上げていくのでしょうか? 大丸、松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリング、三越、伊勢丹を有する三越伊勢丹ホールディングス、高島屋の3社に聞きました。
変容する「お馴染みのサービス」
「百貨店」「デパート」と聞いて、香水の匂いが漂う化粧品売り場を想像する人は少なくないのではないでしょうか。 従来、化粧品売り場では、スタッフが来店客の要望を聞いて化粧を施す「タッチアップ」という接客サービスが行われていましたが、3社では営業再開後、このサービスを取り止めています。三越伊勢丹の広報担当は「例えば、伊勢丹新宿店では、お客様から販売員に『口紅の色味を確認したい』と要望があれば、販売員が綿棒に付けて渡し、お客様にはマスクをとらずに色味を確認いただいています」と話します。客と従業員の接触を最小化するよう工夫しているそうです。 婦人服や紳士服売り場でつきものなのが、試着です。3社はいずれも、来店客が希望する場合には従来通り試着を認める方針です。ただし、試着の後には試着室内やハンガーを適宜消毒し、感染拡大を予防するそうです。また、食料品売り場で定番だった試食についても3社とも実施しないと言います。 従業員について、3社ではマスクの着用を義務付けるほか、勤務前に検温を実施するなど健康管理の徹底を図る方針です。さらに、J・フロントリテイリングと三越伊勢丹は、従業員の私服での勤務を認めることで「3密」状態が発生しやすい更衣室利用者を減らしています。高島屋では、従業員用食堂の座席の間隔を空けるとともに、利用時間を分散して3密を回避しているそうです。