なぜカーリング日本代表は前日完敗のV候補スイスに“1日”で雪辱を果たし銀メダル以上を確定させたのか…決勝相手は因縁ライバルのイギリス…勝算は?
その象徴が1-2とリードされた後攻の第5エンド。 No.1とNo.3が日本、No.2とNo.4、さらにNo.5がスイスという状況で藤澤が投じた1投目で、まずNo.4とNo.5を弾き出すダブルテークアウトを決める。プレッシャーがかかった最終投でスイスのフォース、アリナ・ペーツのショットが乱れた。 10時の位置にあった日本のストーンを弾き出せずに、ハウス内には日本が3つ、スイスが2つのストーンを残す状況に変わった。ここで藤澤が再びダブルテークアウトを決め、さらに投じた石も残したことで一挙4点のビッグエンドで逆転した。 1次リーグを8勝1敗で首位通過したスイスは、10ヵ国中で最少の46失点とディフェンスの堅さを武器としてきた。相手が優位になるスイスの先攻時で2失点したのは8度、3失点は1度だけで、1失点に抑える確率は断トツの70%に達していた。 だからこそ今大会最多となる4失点のショックは尾を引く。続く第6エンド。藤澤の最終投は狙いとはやや異なったが、吉田夕梨花と鈴木が必死にスイープしてプランを変更。No.1とNo.2を日本が占める状況を作り出し、再びペーツのミスを誘って1点をスチールした。チーム全員のコミュニケーションが上回ったと鈴木も胸を張った。 「危ない展開や耐える展開が続いたんですけど、さっちゃん(藤澤)がずっとナイスショットを投げ続けてくれて、ちな(知那美)のナイスコールもあって、チームとしてすごくいいショットを決められた。チーム力を見せられた試合だったのかなと思います」 世界選手権を連覇しているスイスも底力を見せ、第7エンドには3点を返して1点差に詰め寄られた。それでも動揺しなかったと吉田知那美も胸を張った。 「4位上がりの私たちの最大のアドバンテージは、ラウンドロビン(1次リーグ)で他の3チームよりもたくさんのミスや劣勢を経験できたことだったし3点取られることも、4点取られることももう経験していました。なので特に驚くことなく、まだ1点アップしていると冷静に次のエンドの展開を作れたのがよかった」 言葉通りに後攻の第8エンドでしっかりと1点を追加。スイスが勝負をかけてきた第9エンドは、吉田知那美のミスショットもあって大量失点しかねないピンチを招いた。しかし、藤澤が2投ともにダブルテークアウトを成功させ、最少の1失点にとどめた。たとえミスをしてもお互いに助け合う、至高のチームワークが輝きを放った瞬間だった。 迎えた最終第10エンド。夕梨花から順にベストの仕事を果たした結果として、ペーツが1投目を迎えた時点でハウス内だけでなく、その前方にも両国のストーンがひとつもない状況が生まれた。仕方なくセンターガードを置いたペーツは渋い表情を浮かべた。おそらくはこの瞬間に、敗戦を覚悟していたのだろう。 最終的に日本のショット成功率88%は、スイスの81%を大きく上回った。99%の夕梨花だけではない。藤澤の89%に対して、ペーツは74%に甘んじた。リードからベストショットを続け、ペーツに難しいショットを余儀なくさせた証だった。 その藤澤をして「正直、まだ信じられないところはあるんですけど」と夢心地にさせた決勝の相手は、延長戦の末に平昌五輪金メダルのスウェーデンを12-11で振り切ったイギリスに決まった。