変わる「駐妻」、海外赴任に同行した女性たちのキャリア断絶を防げ 三浦梓さんの思い
以前とは変わった駐妻事情
――一方で、昨今の駐妻がかつてと比べてどう変わっているのか、教えてください。 昨年、サンパウロ在住の駐妻キャリアnetの会員の方と話した時も、「この10年で本当に変わった」と言っていました。10年前は専業主婦中心だったのが、今は半数以上が働いている女性たちだそうです。 共働き世帯が70%を超えたこともありますし、転職が当たり前になって、海外帯同のために仕事を一度辞めても、日本に戻ってきて再就職がしやすくなって、仕事を辞めることへのハードルが低くなっていることも要因にあると思います。 20代の駐妻はさらに進化しています。 私が2020年に駐妻になった頃は、仕事を辞めて夫に付いてきたから、日本に戻ったら再就職しなきゃいけない、だから再就職が不安だ、という時代だったんです。でもこの3年ほどで、会社の休職制度を使って1年間だけ帯同して、1年過ぎたら「じゃあね」と日本に帰っていく駐妻も増えています。 どんどん選択肢が広がってきていますし、前例が増えているからこそ、休職制度を利用して1年間だけ海外でリフレッシュしたり、新たな価値観を身につけたり、勉強したり、なんだか留学に行く感覚で来ている駐妻も増えている感じはあります。
課題は「履歴書のブランク」
――なるほど、変わってきていますね。その中で「駐妻キャリアnet」が課題として今現在、取り組もうとしていることはどんな点ですか。 「ブランク」の問題です。駐妻で過ごした期間が日本ではキャリアブランクと見なされるんですよ。ですから私自身が代表に就任した時の活動方針で掲げたものは、「駐妻自身の『主体性』と駐妻キャリアnetを通じた『活動機会の提供』により持続的なキャリア形成を行い、駐妻時の活動による帰国後のキャリア価値の向上を目指す」でした。 駐妻期間をブランクにならないように、その間も就労やプロボノなどの活動を通じて市場価値を上げて日本に戻ることを掲げたんですね。 (国や地域によって)働けるビザと働けないビザがあるので、必ずしもお給料が発生するお仕事だけじゃなく、プロボノといわれるプロフェッショナル・ボランティアを積極的にし、人事とか経営とかをやれる機会で実績を作っておく。駐妻はいずれ日本に帰る時が必ず来るので、その時に「私はこれをしました」という実績を誇れるように、仕事も作っていきます。 ――実際に、プロボノやお給料が出る仕事を探してきているんですか。 そうです。営業活動もしていますが、一番多いのは紹介ですね。それこそリクルート時代の先輩とか、A.T.カーニー時代の同僚たちから、あとはその後、独立した際に業務委託を受けていた時の取引先社長から連絡をもらったり、今回のように取材を受けてメディアに出た時に連絡を頂いてつながったりしています。