変わる「駐妻」、海外赴任に同行した女性たちのキャリア断絶を防げ 三浦梓さんの思い
大手企業にこそ変わってほしい
――そうした女性たちですら、海外帯同という選択をしたら壁にぶち当たったということなんですか。 ぶち当たっていますね。 日本では1社に長く勤める働き方がまだまだ多く、一度レールから外れるとチャンスがもらいにくいところがあります。そういう人たちに向けて働く機会を創出したいと思っています。例えば「週5日」以外の働き方もできないかなと思っています。 特に今、課題だと思っているのが大手企業です。 (社員の少ない)ベンチャー企業は、海外に帯同してもオンラインで仕事を持っていけるようになったんです。でも、大手になればなるほど、1人が抜けても代わりの人がいるので「(休職制度や海外リモートワークの)前例がない」と交渉が進みません。それを解消したくて「駐妻キャリア総研」を設立した面もあります。 データがなく前例もない中で判断するのは企業も難しいと思うんですよね。私自身、駐妻になったから「働きたくてスキルのある人がいっぱいいる」と言えますが、駐妻になる前は、最初にお伝えしたように、どこかセレブな「外交官の奥さん」のようなイメージでした。 駐妻キャリア総研では、どれだけ働きたい女性がいるかや、ブランクを経て再就職できた女性の統計データ、休職制度を利用した方の声など、今7本ぐらい記事を出しているんですが、今後は、企業と共同で研究もしたいと思っています。 仕事や人生、キャリアとなると、女性個人だけではどうにもならない面もあって、社会全体と家族の理解と三位一体の部分があります。企業に対して、どんな状況で、どんな人材が欲しくて、何で困っているのかといったところを解明したい。人材不足というけれど、海外にいる人で仕事をしたい人は多いので、そうした仕事と人が出会える機会を駐妻キャリアnetとして作っていきたいと思っています。大手企業などで成功事例を作って、試してみようという会社が出てくればいいなと思います。 ――800人からの人材プールで、何でもできそうですね。 はい。以前に「駐妻による駐妻のための英語コーチ」という新しい事業を始めたんです。学校での子どもの担任との交渉とか、ホームパーティーの開き方とか、経験者だから話せることがあります。その時は3日間で英語コーチになりたい人30人から応募がありました。 そういった意味で、「駐妻×専門性」の仕事を作ることも考えていて、協会も立ち上げようと考えています。駐妻に関する認定資格を取って、そこで市場価値を上げていき、日本に戻った時に資格や実績を示せる生き方ができるようにと思っています。 まだまだ課題はあって、日本社会全体や大手企業に駐妻の価値を感じてもらわないと事態は変わらないなと思っているので、駐妻キャリアnetをブランド化する法人化も考えています。今後は国内の転勤妻を支援する取り組みもしていきたいと思っています。