変わる「駐妻」、海外赴任に同行した女性たちのキャリア断絶を防げ 三浦梓さんの思い
「駐妻キャリアnet」と出会うまで
――「駐妻キャリアnet」と出会うまでを教えてください。 それまでは、駐妻の知り合いもいないし、「駐妻」という言葉も聞き慣れず、外交官の奥さんとかセレブな世界なのかなというくらいで、全然イメージを持っていませんでした。その時には会社員も辞めて自分で会社をやっていたので、その会社のブラジル支社もありかな、ブラジルに拠点を作ってビジネスにつながればいいなというのが頭にあったくらいです。 そこで駐妻になると決まった2019年秋に、現地でも働き続けたいと思って、いろいろネット検索をしたんです。ロールモデルとか、どういうキャリア形成の仕方があるんだろうと、いろんな方のブログを読んだりしたんですが、なかなか自分が目指す方向性の方は出てこなかったということは、すごく課題に感じました。 ――三浦さんは、どんな方向性のキャリアを目指していたんですか。 専門性を持ちつつ、どこでも働ける働き方、生き方です。当時は、「元いた会社に復帰する」とか「再就職に悩んでいる」というブログはあったんですが、自分自身で生きていくといった独立した生き方はなかった記憶です。 ――「駐妻キャリアnet」とは、どのように出会ったのでしょうか。 ブラジルに渡る前にネット検索する中で、働きたい駐妻たちのネットワーク「駐妻キャリアnet」があることが分かったので、設立した代表の方に直接会いに行って話を聞いたりしました。 駐妻キャリアnetは2017年7月に設立されて、私がブラジルに行った2020年当時はできてから約3年経過したタイミングでした。同じカンピーナスの駐妻コミュニティーに運営サポーターの方がいて、話を聞いたらリクルート時代の共通の知人がいたりして仲良くなるうちに、サンパウロにいた2代目の代表に引き合わせてもらい、ブログを任されるようになりました。
「駐妻が働く」がタブーだった時代
――ブラジルで発足した駐妻のコミュニティーが、三浦さんが代表になって一気に世界規模に広がった感がありますね。 そうですね。コロナ禍でオンラインツールが発達したことが大きかったと思います。それまで対面で会うことが普通でしたが、コロナで会えなくなったこともあって、オンラインツールの力で一気に会員数が拡大しました。 「駐妻キャリアnet」も、以前はコミュニティー内で、対面で関わりながら悩みなどについて話をする場でした。というのも、2017年ごろって、今みたいにブログやYouTubeやインスタグラムで、駐妻が「働きたい」と主張すること自体がタブーだったんです。 ――どういうことでしょうか。 10年ほど前は「働くなんて、子どもがかわいそうだ」などと言われて、「働くこと」が攻撃される時代でした。 今は専業主婦の方が「働かないで何してるの」とSNSで攻撃されるのを見たりしますが、まさにその逆です。どちらがマジョリティーかで変わってくるんだと思います。 駐妻キャリアnetを最初に立ち上げた時も、「駐妻が全員働くとなったらどうしてくれる」「余計なことをするな」と批判する手紙が届いたそうです。「駐妻=働かなくても生きていける身分」という既得権が侵されると感じたのかもしれません。 今の代表を務める私にも、そことの葛藤がありました。ですから、自分が発言するときは、「全員がこういう意見です」とは言わないようにしています。女性にいろんな生き方があるように、駐妻にも、仕事したい人もいれば、家庭を優先したい人もいる。みんなが好きなように生きられたら良いと思っています。