重度の自閉症の子を育てる親御さんへ伝えたいこと...きょうだい児の目線から医師が語る体験談
知的障害合併の自閉症の姉とともに育った、発達専門小児科医の西村佑美先生。きょうだい児としての目線、そして医師としての目線から感じた「知的障害をともなうASD」の子どもが持つ可能性とは? 【マンガ】「自分の子の発達遅れ」を受け入れられなかったママ医師が、子どもの前で初めて泣いた日(西村佑美さんの体験談) ご自身の体験談と共に「知的障害をともなうASD」のお子さんを育てる親御さんに知ってほしいことを、著書『発達特性に悩んだらはじめに読む本』よりご紹介します。 ※本記事は、西村佑美著『発達特性に悩んだらはじめに読む本』(Gakken)より、一部を抜粋編集したものです。
わが子が「知的障害をともなうASD」と診断されたら…
発達相談では、「知的障害」という言葉に引っ張られて「この子は何もわかっていないのでは」と思い込み、沈んだ表情になっているママもいます。でも、「しゃべれない=わかっていない」ではありません。 お子さんの日常の様子がわかる動画を見せていただくと、会話ができなくても一生懸命にアイコンタクトやジェスチャーでママやパパの声かけに反応できていることが多いのです。「いろいろなことが理解できていますよ」とお話しすると、親だけではなく子ども本人の表情も明るくなります。 コミュニケーション手段は、会話だけではありません。アイコンタクトの強化、ジェスチャーなど非言語コミュニケーションでの要求、NO・YESの意思表示、文字を教えて使うなど、できることはたくさん!。 子どもの視線、表情、動作…やりとりのわずかな反応のサインを見逃さないようになると、「この子はわかっているんだ!」という喜びを感じられるはずです。
幼児期に言葉の遅れがある子の発達(知能)検査の心構え
幼児期の発達(知能)検査は会話力が影響するので、ASDの特性が強く、言語発達がゆっくりな子は答えられず、知能指数(IQ)の数値が低く出ることがあります。でも、「会話ができない=わかっていない」ではありません。 検査はその子の"知能"の全てを測れるものではなく、そのときの状態を切り取ったもの。子どもは知らない人、場所では緊張して本来はできる課題に答えられないこともあります。検査の結果は「課題や支援のポイントを見つけるための参考のひとつ」と捉えてみてください。 幼児期は言語能力や社会適応の力が大きく伸び、成長とともに検査結果が変わることもある時期。先天的な疾患などが関わっていることもありますが、幼児期に「知的障害合併のASD」と断定するのは難しいと思っています。本当に知的な発達の遅れがあるのかは、就学前、学童期と定期的に検査を受け、慎重に見ていく必要があります。