奨学金が返せないし生理用品も買えない…「結婚なんて無理ゲー」な若者の貧困
昨今、未婚化の問題が取り沙汰されているが、そこには経済的な理由を挙げる若者たちの存在が大きい。「結婚は嗜好品」「子どもは贅沢品」と言う彼らの貧困のリアルに迫る。※本稿は、牛窪恵『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 積極的に結婚したくない理由 男女ともに「経済力がない」 昨今の未婚率の高さは、雇用形態や年収の「格差」と強く結びついています。30~34歳で既婚の男性は、「正規(雇用)」では約6割ですが、「非正規」では約2割しかいません。同じく30~34歳男性の「年収」と未既婚の関係を見ても、年収500~599万円では既婚が7割超にのぼるのに対し、同200~299万円では4割弱に留まります。 現状の未既婚だけでなく、中央大学の山田昌弘教授が「希望格差」と表現した「結婚意欲(希望)」との関係も深刻です。仕事が不安定だったり低年収だったりする人ほど、「結婚どころじゃない」「そんな(心の)余裕はない」と結婚に希望を抱いておらず、既にこうした傾向が、女性にまで波及しているのです。 先の内閣府の「男女共同参画白書」(2022年)を見ても、「積極的に結婚したいと思わない」理由として、20~30代独身者の4割弱が挙げたのは、男女ともに「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」でした。男性で36.0%、女性で35.0%と、回答割合に男女差がほとんど見られないのが実情です。
● 結婚は嗜好品、子どもは贅沢品… 奨学金に苦しむ若者の心境 なぜ未婚(独身)女性にも、結婚の希望格差が及んだのか、理由は大きく2つあると考えます。 1つは、奨学金の借り入れをはじめ、学生時代からの経済苦、もう1つは「共働き」を前提とした働き方の変化でしょう。以下にポイントを挙げながら、みていきます。 いまや4年制大学(昼間部)に通う学生の約半数(49.6%)が奨学金を借りており、平均受給額はおよそ310万円にものぼります。受給率は、96年(21.2%)の2倍以上に増えた計算です(20年 日本学生支援機構「学生生活調査」ほか)。 背後には、今日の大学生の親の多くが、先の「貧乏クジ世代」(団塊ジュニア)に当たり、両親の生活が決して楽ではないこと、また大学進学率が上がる一方で、大学の年間授業料がこの約30年(91年→21年)の間に、とくに私立で約1.5倍(約64万円→約93万円)にも値上がりしたことも関係しているでしょう(21年 文部科学省調べ)。