奨学金が返せないし生理用品も買えない…「結婚なんて無理ゲー」な若者の貧困
学生時代から、既に数百万円という借金を背負わされた彼らが、「結婚は嗜好品」や「子どもは贅沢品」、あるいは「結婚は無理ゲー(無理なゲーム)」といった声を上げるのも当然ではないでしょうか。武蔵大学の大内裕和教授(教育学者)も、新聞の取材に対し、「奨学金の返済負担による未婚化・少子化は深刻だ」と答えています(22年 東京新聞、8月12日掲載)。 ひとたび海外に目をやると、ヨーロッパは大学の学費を無料とする国が多いほか、アメリカもスカラーシップ(奨学金制度)の基本は「返済不要」で、有利子の教育ローンと明確に区別しています。 ところが日本の奨学金は、世帯所得などによって受給資格が線引きされるうえ、6割以上が有利子です。本当にこれで良いのでしょうか。 政治の大きな役目は、若者に未来の希望を抱かせることであるはずです。彼らの未来への出資は、「施し」ではなく「投資」でしょう。イノベーションに官民120兆円もの投資目標を掲げるのであれば、その一部をなぜ奨学金関連に回さないのか、理解できません。
現代は生活上のリスクが「10~20代の『人生前半』に始まる」とし、「人生前半の社会保障」の重要性を説いたのは、京都大学 人間・環境学研究科の広井良典教授です。彼は、教育世界一とも言われるフィンランドの元議員イルッカ・タイパレ氏の著書を引用し、「福祉社会と(国際)競争力は互いにパートナー」関係にあり、無料の学校教育等によってもたらされる市民のしあわせと社会の安定は“特許のないイノベーションである”と述べました(10年「イミダス」集英社、4月9日掲載)。 まさに若者への教育支援こそが、未来の国際競争力にも繋がるイノベーションの源泉でしょう。いまこそ、人生前半の社会保障を「投資」と捉え直す時期ではないでしょうか。 一方で、私は40代後半で大学院に通い、MBAを取得しました。「リスキリング(職業能力の再開発、再教育)」の拡充、あるいは学歴偏重や新卒一括採用の見直しなど、経済苦にある20代が必ずしも「大卒」「院卒」にこだわらなくて済む、そして30~40代になっても学び直しできる社会の実現を目指すことも、非常に重要だと思います。 提言1:奨学金支援を、「イノベーションの源泉=投資」と捉えるべし 提言2:リスキリングの拡充も含め、20代前半の学歴にこだわらない社会の実現を