どんなテンションでやっていいかわからなくて――渡部建、東野幸治と振り返るこの2年
東野:でも、ネット記事を読んでたら、渡部さんに世話になった人が「あんなやつとは思わなかった」って憤慨して、店に飾っていたサインを外したって。そういう意見もあるやろ? 渡部:もちろんあります。ただ、逆に、サインを外したって報道を受けて「ウチは真ん中に飾り直しましたよ」って連絡をいただいたりもしていて。 東野:なんで俺の話で終わらせへんねん(笑)。何やねん、その負けん気魂。 渡部:これは……僕の悪い癖ですね(笑)。
渡部がハッとした、東野の一言
東野:でも、『行列』でも「世界の渡部」って呼ばれて映画を面白おかしく紹介したりとか、とにかくガッツがあって、格好悪くてもいいから前に出るっていうのが渡部だから。 渡部:そもそも僕のそういう仕事ぶりを最初に指摘してきたのが東野さんだったんですよ。僕らはネタブームのときに『エンタの神様』で出てきたけど、ひな壇も苦手だったし、一気に仕事がなくなっちゃったんです。そこからは資料を全部読み込んで覚えてくるとか、ほかの芸人が面倒臭がってやらないようなことを全部やるようにして、ちょっとずつ仕事が増えてきたんですよ。 その時期に、天王洲のスタジオのメイクルームで東野さんと顔を合わせたことがあったんです。そこであいさつをしたら、東野さんが開口一番、「お前、どえらい仕事の仕方してるな」って(笑)。 東野:覚えてない、覚えてない。でも、やっぱり興味あったんちゃう?なんやこいつ、って。シュッとしたコント師のイメージから、わらをもつかむようにバラエティーに出るっていう、恐ろしいやつが出てきたな、って。
渡部:そこで、ああ、やっぱりこういう人にはバレるんだな、って思ったんです。その頃、町のことを紹介するために、その町に詳しいタレントを集めて、いろいろ話をするっていうのがあって。あの番組って「この町に詳しいタレントさんいますか?」って番組側が事務所に呼びかけて、実際に詳しい人がそこに名乗り出るんですよ。 でも、僕はとにかく仕事が欲しかったから、全部の町のときに手を挙げてたんです。それで、収録の日までにその町に行って、お店を回ったりリサーチしたりして、本当に詳しくなっていたんです。そこからその番組にコンスタントに呼んでもらえるようになって。その後に東野さんにお会いしたら「お前、本当は町のこと何も知らんやろ。どえらい出方してんな」って、それも見抜かれて(笑)。 東野:スタッフもそれは気づくやん。あれ、渡部さんって、いろんなところ詳しいって言ってるな、って。でも、そうやって番組に対して前のめりになって参加してくれてるんだ、って思われて、喜ばれるやん。 渡部:たぶんそれでオファーをいただけたんだと思いますけどね。 東野:別に渡部のフォローをするわけじゃないけど、たとえば番組で「渡部さん、お肉のおいしいお店を紹介してください」って言われたら、「牛ですか?豚ですか?」とか聞いて、スタッフのリサーチ結果も受けて、その中で番組が一番盛り上がるようなお店をチョイスしてくれる。で、ロケが終わったら、渡部が後日おみやげを持って、そのお店にお礼に行ってるんですよ。何も関係ないのに。 渡部:それは、そうしないともめることがあるっていうのがわかったからなんです。事情をわかっていないADの子とかが失礼なことを言ってしまって、お店とトラブルになる、みたいなことがあって。いわば、寺門ジモンスタイルなんです。これが一番トラブルを少なくする。