「なんでこんな問題ができないの」 教育虐待の根底に親の“学歴コンプレックス”
■仕事ができる人は… 感情が抑えられないのはなぜなのか。女性はたびたび自問してきた。 まず、仕事のストレスがある。成果を求められる重圧があり、残業も少なくない。子どもの寝かしつけが遅くなる日は、特に子どもへの当たりが強くなる。 また、夫への不満もある。中学受験にあまり興味がなく、勉強をまったく見ようとしない。受験については自分一人で導かなければならない。その孤独感も大きい。 さらに思い至るのは、自分と同じ後悔をさせたくないという思いが強すぎるからではないかということだ。 女性も小学校のころ、中学受験を経験した。ただ、あまり勉強に身が入らず、第1志望には受からなかった。進学したのは、学校見学にも行ったことのない学校だった。 両親は勉強のことに口を出さないタイプ。悪く言えば、放っておかれていた。もう少し、勉強について具体的な助言や、叱咤があれば結果が違ったかもしれない。そんな思いが残った。 学校に愛着が持てず、中高時代も学習意欲はわかない。欠席も多く、成績は思うように上がらなかった。学校推薦で大学に入ったが、進学先として不本意だった。 社会に出てみると、仕事ができる人の多くは有名大学を出た人だと感じられた。自分の学歴にコンプレックスを感じることがたびたびあった。 社会はいま、経済格差が広がっているようにみえる。給料のいい仕事につくには、学歴がますます重要だとの思いが強くなっていった。 (朝日新聞記者・高浜行人、福井万穂) ※AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より抜粋
高浜行人,福井万穂