「なんでこんな問題ができないの」 教育虐待の根底に親の“学歴コンプレックス”
職場で「優秀な人はよい大学を出ている」という現実を目の当たりにしたことがある人は多いだろう。自分の子どもには、よりよい環境で学び、有名大学を出てほしい。そんな思いから時に過剰な叱責や暴力を振るってしまうケースがあるようだ。AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。 【アンケート結果】中学受験時に両親から暴力を振るわれたことがあった? * * * 東京都の40代の会社員女性は小学校低学年の長女が年長の頃から、大手学習塾に通わせている。中学受験の準備のためだ。 入試まではまだ時間があるが、すでに塾からかなりの量の宿題が出ている。そのため朝は早く起きて塾の宿題などをやる習慣をつけさせた。隣に座って採点をしたり、わからないところを教えたりした。 自ら取り組むまで待つのがベストだとは分かっているが、放っておいても自ら勉強を始めることはなかなかない。親が手間をかけなければ受験で不利になると考えた。 ただ、女性には悩みがあった。長女にできない問題があるとつい言葉がきつくなり、時に激高してしまうことだ。 昨年のある日の朝、算数の文章問題が解けず、長女の手がとまった。「問題文を整理して図に書こう」。いらだつ気持ちを抑えながら、何度も言ってきた指示を繰り返した。その後、長女が図を書くことを怠り、ミスをしたところで爆発した。 「何回言ったらわかるの!」。大きな声を出し、参考書を床に投げつけた。 いったんあふれでた感情はなかなか止まらない。 「なんでこんな簡単な問題ができないの」 「あなたのためなのに」 強い口調で立て続けにぶつけた。長女は悲しそうな顔のまま黙っていた。「説教」が終わったのは、昼ごろになってからだった。 その後、女性は冷静になり、激しく後悔した。強く叱るのは本人の意欲をそぎ、逆効果だとわかっているのに、冷静ではいられなくなる。自分のやっていることは教育虐待の域に達しているかもしれない。