全入化で減少続く大学夜間部 社会人の「学び直し」として生き残り 吉永小百合さんら卒業
苦学生の「学びの場」だった大学夜間部(2部)。「大学全入時代」の影響もあり、設置大学数とともに志願者も減少しているが、近年では大卒資格の取得やリカレント(学び直し)を目的とした社会人経験者の入学も増えているという。令和の現代、社会人学生はどんな思いで夜間部の門をくぐるのか-。 【グラフでみる】大学夜間部は約35年で約3分の1に減少した 「キャリアアップのためですが、高卒という学歴コンプレックスもありました」 昭和26年に夜間部を設けた大阪経済大(大阪市)。今では関西の私立大で唯一となる経営学部2部の3年生、徳山将立(まさはる)さん(25)は入学理由をそう話す。 大学受験に失敗し、就職したが、学生生活を送る友人らと自身を比べる日々。「社会に出て数年間は腐って人生を諦めていた」と振り返る。 だが、社会人生活を送るうちに、次第に会社経営について学びたいとの思いが芽生えた。令和4年、学費が抑えられる夜間部がある同大の面接試験を受けて入学、仕事は退職し、現在はアルバイトと奨学金で学生生活を送る。 組織論や人材管理など3年間の学びを生かして「管理職として活躍したい」と徳山さん。「再び社会に出るのが27歳なので少し不安」と明かすが、「社会人の経験値と大学での学びが自分の強みになる」と将来を前向きに捉えている。 徳山さんと同じく3年生の丸山舞さん(30)は不動産業界での勤務経験から、仕事でのキャリアアップと私生活が両立できる女性の働き方を知りたいと転職後、入学した。 授業や18~72歳までのさまざまな年齢の同級生との交流、自身も昨年、母親になったことで求めていた「答え」が見え始めているという。「同級生と話していると、新しいことに挑戦する先に自分の可能性があるのかなと感じます。社会に出てからも学び直す機会が当たり前になれば」と話した。 昼間働いている「勤労学生」の学びの場として戦前から全国の大学で開講されていた夜間部だが、昭和22年、教育基本法で初めて法的に規定された。 首都圏では早稲田大や横浜国立大、関西圏では同志社大や立命館大などにも設置された。女優の吉永小百合さんや元宮崎県知事の東国原(ひがしこくばる)英夫さん(いずれも早稲田大の第二文学部)など著名人の出身者も多い。