全入化で減少続く大学夜間部 社会人の「学び直し」として生き残り 吉永小百合さんら卒業
しかし高度成長期を経て国民の生活が底上げされたことや60年代以降、大学や学部の新増設が盛んになり、平成にかけて「大学全入時代」が到来。社会人向けの専門大学院の設置も進み、次第に夜間部の存在意義は薄まっていった。文部科学省の学校基本調査(令和5年度)によると、平成元年度には全国の141大学に置かれていた夜間部は、その後一時増えたものの、令和5年度には約3分の1の56大学にまで減少している。
大学教育に詳しい近畿大の松本圭朗(よしろう)助教(教育学)は、「夜間部はリカレント教育を目的とした社会人学生をメインターゲットにするよう変化した」と指摘する。
現存する夜間部では、社会人学生を含めた多様な学びのニーズに応えようと環境整備が進む。夜間部で唯一の理学部がある東京理科大では、育児や介護などさまざまな事情を抱える学生を念頭に、4年で卒業する学費とほぼ同じ費用で、5~6年かけて授業を履修できる制度を導入した。
大阪経済大でも平成28年度、定員を90人から110人に拡大。学期を1年間で4分割し、短期間で多くの科目を履修できる「クォーター制」を採用している。しかし、少子化の影響や奨学金制度の拡充で志願者は減少に転じ、昨年度からは定員を50人にまで縮小した。
夜間部の授業を担当する水野未宙也(みうや)講師は「社会人学生の需要もあり、定員削減の慎重論も根強かった」と振り返る。
水野氏自身、社会人学生から感じる熱量は多いといい「授業後に質問を受けたり、勤務先の事情を聴いて授業の内容と絡めて議論を深めたりするなど現役生にはないニーズを感じる」と明かす。
「夜間部を取り巻く現状は厳しいが、これまでの歴史もある。学びたいという人がいる限り続けていきたい」と話した。(小川恵理子)