テン・ハフには感謝しかない。マンチェスター・ユナイテッドは次こそ変われるのか。もう負け慣れた、言い訳したくない【コラム】
プレミアリーグで歴代最多優勝を誇るマンチェスター・ユナイテッドに変化が訪れようとしている。2022年夏から指揮を執っていたエリック・テン・ハフを解任し、スポルティングCPで確かな手腕を発揮していたルベン・アモリムが後を継ぐことになった。まだ39歳という若き名将は”赤い悪魔”をどう変化させるのだろうか。(文:内藤秀明) 【一覧】プレミアリーグ 2024/25夏の移籍情報 全20クラブ
⚫️ひどく感傷的な出来事が連続的に起こった
今年もマンチェスター・ユナイテッドが慌ただしい。エリック・テン・ハフが解任となり、アシスタントコーチだったルート・ファン・ニステルローイが暫定で監督を務めることになった。 かつての英雄がメガネにジャージの格好で、コーチとしてベンチに座っているだけでも感慨深い。しかも暫定監督になるやいなやピシッとスーツを着用して指揮をとり、自軍の得点に大興奮のご様子だ。その映像を見るだけで、涙腺が緩みそうになる。 30代にもなると、色んな運命の交差を目撃することになるからか、単純に懐かしいことが増えたからなのか、涙もろくなってきた。それでもなお、感動の涙より、悔しい敗戦に泣くことの方が多いのは、腹立たしいことこの上ないのだが。 いずれにしても、2年連続で国内カップ戦の優勝をもたらした愛着のある監督の解任と、OBが暫定監督に就任というひどく感傷的な出来事が連続的に起こったのだが、それらの感情を整理する間もなく、新監督が決まった。ルベン・アモリムという稀代の名将が11月中旬からユナイテッドの監督を指揮することになったらしい。 待てよ。もう名将と言い切っていいのか。あるいは候補という言葉を後ろにつけるべきか。ここ10年ほどは、名将が来たと思いきや、蓋を開けると「漢字が違うのか?」と頭を傾げたくなることが多かった。断言することにやや恐怖心はある。
⚫️数々の困難なタスク。テン・ハフには感謝しかない
それでも『INEOS』新体制の眼力を信じて、そして勇気を振り絞って、懲りずに言おう。ポルトガルの若き名将が我が軍を率いることになるらしい。これで我が軍は強くなるはずだ。今度こそ。 オランダ人監督は2年間と少しの間、赤い悪魔の監督を務めてくれた。 オーレ・グンナー・スールシャール期間に蔓延していた弛緩した空気と向き合い、攻撃面での戦術的無秩序にも向かい、クリスティアーノ・ロナウド、ジェイドン・サンチョ、マーカス・ラッシュフォードなど扱いのむずかしいスターとも向き合い、その上でフロントの組織改変にお付き合いし、補強関係も担当した。 米スポーツメディア『ジ・アスレチック』によると、昨季までのテン・ハフはタスク過多でキャパオーバーの状態だったらしい。 にも関わらずメディアやファンは、やれ「攻撃的に戦え」だの、やれ「ラッシュフォードを覚醒させろ」だの、やれ「タイトルは獲れ」だの、やれ「OBの意見も聞け」だの。気が狂いそうになるほどの外圧があったはずだ。 そんな過酷な環境で、しかも怪我人続出という不運もあった上で、若手を育てて、2年連続でタイトルを獲得してくれたのだから、テン・ハフには感謝しかない。本当に「お疲れ様です」と機会があれば本人に伝えたい。 もちろん細かいことを言えば、シーズン中の判断にはフラストレーションを溜めることもあった。